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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第三十三話 桔梗のお守り

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日18時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

甘い香り、薄暗い館内。


人々が売店に並んでいる。


「何味食べるの?」ヒロが聞いてきた。


「何味があるん?」


「キャラメルか塩やろ。」


「じゃ、塩で。」


「櫻って甘いの嫌いよな。」


「嫌いやないよ。好んで口にしないだけ。カロリーはお酒で摂取したいの。」そう答える。


「だからって、職員室でもらってくる菓子を俺の作業台に置いていくなや。」


「えぇやん。ゴン狐みたいで。」


「何それ?」ヒロが首を傾げる。


「え?『ゴン、お前だったのか。』を知らんの?」


ヒロが縦に首を振る。


「小学校は内宮の寺子屋?」私が尋ねる。


「ちゃうよ。」


「じゃ…。」


「あ!俺、支援級やから。魔力が高くて小学生の頃発狂していた。」


おぉ、どう処理したらわからない爆弾が出てきてしまった…。


どうしよう。


「そんな顔しやんでもえぇよ。偶然、教育伝達者の先生おって3年生ぐらいからまともになってきたから。」


「そうなんや…。」


でも、ゴン狐は4年生で習うぞ?


「まぁ、学校なんて寝ていただけやし。あんまり思い出ないかなぁ。」


「そうなの部活とかは?」


「陸上部。」


今の筋肉からは考えられないぞ?


そんな会話をしながらポップコーンを受け取って席につく。


「ごめん。櫻。俺トイレ行ってくるわ。上映までに間に合わすから座って待っとて。」


そう言って、ヒロがトイレに行ってしまった。


なんか、薄暗いシアタールームに一人とか寂しいな。


「お姉さん。」後ろから声をかけられる。


中年の男がニヤニヤしている。


視線が気持ち悪い。


「デート?」


私は答えない。直感で答えてはいけないと思った。


威圧してやろうか?


しかし、男の体がこちらに前のめりになっている。


この体勢で威圧したらこちらに男が転がってくるな…。


「お姉さん。綺麗やね。俺と遊ばん?」


「はぁ?」


私は思わず睨む。


「わ!怒った顔も可愛い。俺と遊ぼうよ。なんぼ欲しい?お姉さんならホ別5。いや、10出すわ。」


この男は何を言っているんだろう?


私は、前を見て座り直す。


「そんな全身ブランド物で…。遊んでおるんやろ?」


全身ブランド?遊んでる?どういう意味だ?


「あれが本命なん?あんな男より、俺と気持ちいいことしようや。」


“あんな男”そう言われて私の中で何かがキレた。


男を威圧する。


こちらに倒れそうになる男。


男の額を軽く弾いて席に戻す。


周りを見る。


気づかれてないかな?


館内が暗くなる。


上映マナーやCMが流れる。


そうして、ヒロが戻ってきた。


「櫻、すまん。」小声でヒロが話す。


「ううん。大丈夫。」私も小声で話す。


「……なんか、櫻が威圧した後みたいに空気が冷たいけどどないした?」


ヒロが私を見て心配してくる。


「何もないよ。」


そして、私は後ろの男をチラッと見た。


ヒロが後ろを確認する。


頭を抱えてる。


「まぁ、自業自得か…。」そう呟くと席に座り直した。


私は、コーラを飲む。


シュワシュワぁ〜。


私は、ポップコーンをつまむ。


一口で食べてみる。


サクサクとして軽い。


確かに映画にはいいかも。


そうやって、映画を楽しんだ。



◇◇◇



窓の外からは、神辺かんなべタワーと港が見える。


席に座り目を向けると綺麗な景色が広がる。


ピザとサラダビュッフェのレストラン。


櫻は、マルゲリータとアイスティーを頼んでいる。


ストローでアイスティーの氷をカラカラと回している櫻。


それだけでも絵になる。


「それで…その男が全身ブランドで遊んでいるんやろうって…。」


映画館での事を聞いている。


似合いすぎて気が付かなかったが櫻は全身ブランド物だった。


そして、金で女を買うって概念がなかったから想像できなかったが、確かに、こんな若い女が全身ブランド物やと、パパ活女子に見えるわな。


「櫻ぐらい若い女が金持ってそうな服装だと…。パパ活に間違われたんや。」


「パパ活?私の父は死んだよ?」


そっちやない…。


「売春婦と間違われたんや…。」頭を抱える。


オブラートに包んだら気が付かないのでダイレクトに話す。


「え?綺麗にしてるとそう見えるの?」


「ちゃうちゃう。若いのに金を持っていそうな女は2択や華族の令嬢か体を売って商売している女か…。こんなところに華族令嬢はおらん。だから、間違われたんよ。」俺が頬杖をつきながら話す。


今日は、縦肘をついても怒らんな。


「女の人をそんなふうに思うなんて。」櫻が横を向いてむくれる。


俺は、先ほど買ったネックレスを出す。


「つけとき。お守りや。」


櫻が小首を傾げて中を開けた。


「これって!」驚いた顔が可愛い。


「俺がさっき買った安モンや。これで全身ブランドもんにはならん。つけとき。」


櫻が箱の中のネックレスを手に取る。


小さな五角形の櫻のような花のネックレス。


花の下には小さなドロップ型のローズクォーツの石が揺れている。


「大夢君……。このネックレスの花、桔梗だよ?」


「そうなん?つげ櫛と同じかいな。好きな花なんやろ?」


だから、見ていたのか…。


「そうじゃなくて…。花言葉とか…。」


俺が不思議そうに櫻を見る。


「何もない。ありがとう。今つけるね。」にっこりと笑って櫻がネックレスの丸カンを外す。


「つけたるわ。」自然とそう言葉が出て俺は立ち上がる。


そうして、櫻の後ろに回る。


櫻が髪を手で押さえる。


頸が見える。


ネックレスをつけてやる。


振り返り笑顔の櫻。


「ありがとう。」


“かたじけのうございます。”そっちの方が似合ってると思った。

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