第三十一話 あなたの隣がいいんです。
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
ガラスの手すり越しに広がる港の景色は、澄み切った海が美しい。そして、神辺の街並みは大きな絵巻のように鮮やかだった。眼下に広がる神辺港の水面は、日の光を浴びてきらめいている。
時折、白い帆船や観光船が静かに波をかき分けて進んでいく。
ふと、鮮やかな赤い観覧車が目に入った。
「観覧車乗る?」私の視線に気がついたヒロが提案してきた。
「うん。」私が返事するとふうっとヒロが笑った。
その笑顔がとても眩しい。
タワーを降りて、観覧車に向かって歩き出す。
トントンとヒロとの手が当たる。
私の方から手を握る。
ヒロを見上げる。
少し驚いた顔をしている。
私が得意気に笑う。
「なんや?」ヒロが困惑気味に尋ねてきた。
「いつものイタズラの仕返し。ダメ狐。」そう言ってヒロを煽る。
おもむろにヒロが私のスカート捲る。
顔を真っ赤にしてスカートを抑える。
「櫻子姫様!ガーターとはエロいですねぇ。誘ってますぅ〜。」ヒロが仕返しをしてきた。
「ダメ狐!」
うぅ、倍返しされてしまった。
誰かに見られてないかな?
ヒロ以外に見られるの嫌なんやけど。
そうして、自然とお互い手を繋いだ。
カラフルなゴンドラが回る。
タイミングよく乗り込む。
「こうやって乗るんだ。初めて知った。」自然と私の口からそんな感想が漏れる。
「はぁ?」ヒロが驚愕する。
ヒロが少し、服をバタバタとさせている。
ゴンドラの中は熱気でむわっとしていた。
確かに少し暑いな。
私は、魔法で冷風を出した。
「おおきに。櫻、ほんまに初めてなん?観覧車。」
「せやで。」
「遊園地とか行ったことないん?」
「あるよ。ネズミランド。」
「ネズミランドに観覧車はないん?」
「どうだったかな?忘れた。貸切にしないといけないから何回も行ったことないもん。」
「………そうですか。」そこでヒロが外を見た。
私も外を見る。
四ノ宮の商業施設のビル群の向こうに七甲山の山並みが青緑の層を重ねてそびえたつ。
綺麗な街だな。
「そういや。なんで櫻ってタバコ吸ってるの?」ヒロが尋ねてきた。
「憧れていた人が吸っていて…。あとは、戦場でお酒飲めやんし。」私が答える。
「大夢君は?」
「俺はなんとなく。暇つぶし。」
ヒロらしい。
「大夢君はお酒飲めやんの?それとも飲まんの?」私ばっかりお酒飲むけど、ヒロが飲んでる所見たことないな…。
「アレルギーなんよ。飲んだら湿疹が出る。アルコール消毒も体調悪い時はあかん。」
「そうなんや。教えておいてよ。いざって時困るやん。」私がそんな事を言う。
「いざって?」ヒロがこちらを向いた。
「怪我した時とか…。私の治癒魔法は中級だから、傷や簡単な病気は治せるけど、毒や体内に実弾が入っていたらヒーラーに見せんといかんやん。」
「内宮の病院に連れていってくれるんか?」ヒロが驚愕した顔でこちらを見る。
「当たり前やん…。私たちはバディなんやろ?」
「櫻、ホンマになんも知らんのやな…。」ヒロが悲しそうにこちらを見た。
私が小首をかしげる。
「内宮の病院は華族専用や。庶民は入れん。」
「そう…なん?」
「せやで、丸山さんと入ったコーヒーショップ。あれも華族専用店や。だから俺は席を外そうとしたんよ。」
“忌守”その言葉に私は向き合わないといけないと感じた。
「おかしい。そんなの…。」
「櫻がそう言ってくれるだけでえぇよ。」ヒロが悲しそうに笑った。
「じゃ、私もヒーラーに治療してもらえないな。」
「櫻は大丈夫やろ。」
「今の私は一般人だ!公爵令嬢なんて捨てたの。そして、大夢君をバディとしてる。私の背中を預けれるのは大夢君だけだ!」
ヒロが驚いた目で私を見る。
ヒロの耳が少し赤い。
そして、気が付く。
なんか…。告白しているみたい。
「私は、魚卵アレルギーが軽くある…。外宮の病院もアレルギーあるの聞かれるんでしょ?覚えておいて。」
恥ずかしくてヒロの顔が見れない。
ゴンドラが頂上を過ぎて降下しはじめる。
「わかった。」短くヒロが答えた。
「これからどうする?」ヒロが尋ねてくる。
「どこに連れていってくれるの?」
「せやな…。映画館にでも行って映画観る?」
「映画館!?」
「嫌か?」
「ううん!初めて!」私はワクワクする。
話には聞いたことがあるがあのポップコーンってお菓子を手掴みで食べてみたい。
そんな話をしたら…。
「……さいですか。」短く答えられてしまった。
あ!なんか私今詰んでる?
ヒロの中にある華族嫌いメーターが凄く振り切っているように感じた。




