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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第二十九話 鏡の中、知らない私

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日18時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

麗乃うらののハサミが動く。


チョキンと動き私の髪の束が落ちる。


私の髪の毛をこんなに簡単に切れるの凄いな…。


この人も魔力量高いな。


また、チョキンとハサミが動き髪の束が落ちる。


ーーー楽しそうにハサミを使うな。


私もハサミを使うけど…。こんな風に人を喜ばせるようなハサミにしたいな。


「後ろ、触ってみて。手触り良くなってると思うよ。」麗乃うらのが話す。


私が自分の髪を触る。


「すごいです!指通りが違う!」驚いて麗乃を見る。


麗乃うらのが得意気になりハサミを動かす。


「いいのよぉ。しかし、櫻子ちゃん可愛いねぇ。女の子もいける?」麗乃うらのが話す。


「いや…。その…。」


「興味あるなら私と一回やってみない?」


「いやぁ、そういうのは…。」私は困る。


なんて返すのが正解なの?


「揶揄うのはやめえや。」ヒロがとめる。


「えぇ!いいやん。櫻子ちゃん、大夢の彼女じゃなんでしょ?」


「そうやけど…。本人困っているやん。」


“ヒロの彼女じゃない”という事実をヒロから言われる悲しい気持ちと


“彼女にならない?”という女性から告白された奇妙な体験で


私の脳が処理できない…。


「でも、櫻子ちゃんってめっちゃいい癖っ毛ねぇ。」


「え?それパーマじゃないの?」ヒロが驚く。


「違うよ。お姫様みたいな髪と顔ねぇ。」麗乃が言う


【バケモノ姫様】


その言葉がずんと私を押しつぶす。


「本当に希望ないの?」麗乃が聞く。


「……はい。邪魔でなければ。」


「こんなところかな…。櫻子ちゃん確認して欲しいんだけど…。一瞬だけ鏡見れない?」


【バケモノ姫様】


ヒロをちょっと見る。


つげ櫛の時の記憶を思い出す。


鏡の前で笑っている自分。


「大丈夫です。」


ヒロがいる。なぜか大丈夫だと思った。


「じゃ、鏡の布外すね。」


【バケモノ】


でも、大丈夫。


大きな鏡を見てつげ櫛で髪をとかされている自分。


その顔は笑顔。


ゆっくり目を開ける。


「…え?」


鏡の中には、自分が思うより大人びた女性がそこにいた。


大きな目で垂れた目尻で真っ白な肌。


長い髪は胸元まで流れ、毛先に向かって大きな波を描いている。


顔まわりにレイヤーが入っている。麗乃がそう言っていた。


前髪はセンターパートで分けている。


私の癖を生かしてカットしたようだ。


「可愛くなったでしょう?ちょっと髪が傷んでいるからトリートメントするね。シャンプー台に来て。」


私は、促されるようにシャンプー台へ行く。


側使えに髪の毛洗ってもらっていた以来だな…。


久々だな…。この感覚。


でも、大丈夫かな?


「麗乃さん、手大丈夫ですか?私の髪の毛魔力が高いから霜焼けとか…?」


「櫻子ちゃん、西の都出身じゃない?」


「えぇ。」


「西の都の華族の方々は、魔力量が多いし、庶民の中にも魔力の高い人が多いんよ。せやから、美容技術も独自に進化しとるんよ。自分の手ぇを守りながら髪を扱うんは、美容師の基本やからね」


そう、教えてくれた。


やっぱり、私は知らないことが多すぎるな…。


ドライヤーで乾かし、ヘアセットしてくれる。


「ムースで揉むように癖を生かしてヘアセットしたらいいからねぇ〜。」麗乃が説明しながらヘアセットしてくれる。


鏡を見る。


大きな目は、目尻がやや垂れ下がっている。


白い肌。


私だ。でも、自然と見れる。


鏡ごしにヒロを見る。


目が合う。


ふいっと目を逸らされてしまった。


「そうだ!メイクもしましょう!」


そう言うと麗乃は、メイク道具を出した。


「普段お化粧は?」


「ベースメイクだけ…。」


「それだけでも可愛いからいいよねぇ。」


麗乃がメイク道具を出した。


「どんなメイクがいいですか?」


自然と質問が出てくる。


「そうねぇ。櫻子ちゃんは多幸感メイクが似合うかな。」


「多幸感メイク?」


「そう!幸せいっぱいってメイク!」


幸せがいっぱいか…。


「可愛い!特にまつ毛なんてツケマもマツエクもいらんやん!羨ましい!」


麗乃さんはすごく褒めてくれる。


鏡をもう一度見る。


高校生に間違われる私ではなく、少し大人びている。


整えられた肌には、粉ぽさのない柔らかな艶が浮かんでる。


頬の高いところには、桃色のチークがふんわりとのせてもらう。


目元は淡いベージュとピンク。目元にほんの少しだけ赤みがある。


瞼には細やかなラメ。


「えぇやん。」ヒロが呟く。


メイク…。頑張ってもいいかも…。


「はい!こんな感じ!」


「か、ありがとうございます。」


“かたたじけのうございます”ではない。


“ありがとうございます”だ。


私は公爵令嬢じゃない。


鏡の中の自分を見る。


新しい自分に出会えたように思えた。


ヒロが教えてくれた。新しい自分。


会計をして麗乃さんの店を出る。


「麗乃さん、またお店に来てもいいですか?」


「もちろん!デート楽しんでね♩」そう言って麗乃さんが手を振る。


デート…。その言葉に心が踊る。




街に人が増えてきてる。


道行く人が私を見る。


特に男の人の視線が刺さって怖い。


「……大夢君。私、おかしいのか?みんな見てくるんだが…。」


さっき鏡で見た時には少しマシだと思ったのに…。


「櫻が美人だからやろ?」


ヒロがサラッと言う。


「私が?」


「あんた結構、美人やで。」


「外見なんて気にした事ないから…。」


私は下を向く。


だって全部やってくれたし、気にする必要ないし。


「……。とりあえず、モーニングにせーへん?まだ、9時やし。」


そう言ってヒロが私の手を握る。


また、耳が赤くなる。


ヒロを見る。


今日は、薄手のジャケットを羽織り、白いTシャツにゆったりとしたチャコールのパンツ。


足元は履き慣れた感じの革のスニーカーだ。


髪の毛と髭をいつもより整えてる。


香水もつけている。私も香水つければよかった…。


「今日、いつもと違うな。」少し心を凍らせる。そうじゃないとデレてしまう。


「そうか?いつも通りやけどな。」


私たちは二人並んで歩く。


周りの視線を感じる。


今の私たちってどう見えるんだろう?


他人の目から見た時ぐらい恋人だといいな。

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