第二十八話 Escale de Vénus
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
毎日18時更新!
時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
土曜日。
私は、忘れ物がないかちゃんとマジックバックを確認した。
ワンピースの他にやっぱりいつもの服も持ってきた。
ヒロが友達に聞いたら開店前ならという話だった。
朝の7時に美容室に着かないといけない。
私は、朝早いの大丈夫だが、ヒロはあかんから前日に泊まろうとなった。
私たちは、神辺のラブホにいる。
お互い服を着ていない。
「お泊まりして…。ロッキー、大丈夫かな?」
私はロッキーのことを思う。
出かける前に大丈夫か?と尋ねたら
「二、三日でも大丈夫でしゅ!」と言って。
私の肩にちょこちょこと乗って「頑張って櫻子!」と言われた。
どんな意味だろう?
「ロッキーは自分のことは基本できるから大丈夫や。」
ヒロが私の背中を撫でながら話す。
裸になるとよく撫でてくる。ちょっとこしょばい。
「ねぇ、大夢君…。ヒロって呼んでいい?」
もう、気持ちに蓋をする方が辛い。
こっちの方が楽だ。
「じゃ、キスしていい?」
ヒロが意地悪に言う。
「それは…。私たちは仕事仲間兼セフレだし…。」
告白したらきっと失敗する…。
いつもダメ狐ダメ狐と生活指導しているし…。
教師嫌いって言ってるし…。
「俺には、全部見せてるのに悲しいなぁ。」
そう言って、ヒロが私に覆い被さってきた。
◇◇◇
翌朝。櫻がワンピースを手にして悩んでいる。
下着姿にガータベルトをつけてラブホのガウンを着ている。
最近は、スポブラ以外の下着も着るようになってきてる。
「どないしたの?」と声をかける。
「こんなの似合うかなって。」
櫻は白に水色の花柄のワンピースを手に持っている。
「似合うと思って買うたんやろ?」
「私じゃなくて浪華の伝達者の豊富さんが、仕事を手伝ったお礼って…。」
浪華の伝達者は俺を真っ先に切った男だ。
確か、豊富翔太郎と言ったかな?
多分、豊富はその服を着た櫻とデートしたかったんやな。
ご愁傷様。
「神辺なんて、お洒落な街だし…。パッとしない服で大夢君の隣歩いたら大夢君に迷惑だし…。」櫻がおずおずと話す。
「着たらえぇやん。似合うと思うで。」
そう言って俺はワンピースを取り上げると。
「ばんざーい!」と言って、俺は櫻のガウンを脱がす。
ワンピースのファスナーを開けて櫻に被せる。
「ちょ!大夢君!」
「いいから袖を通せや。」
櫻は袖を通す。
「後ろ向いて。」
そう言うとファスナーをあげた。
そして、くるっと櫻を正面に向かせた。
上品な白い生地にブルーとイエローの花柄が散りばめられた柄。
肩口が見えるデザインが女の子らしい。
そこにふんわりとした袖。
俺を見上げる櫻はとても可愛かった。
これでメイクとヘアセットしたら芸能人と間違えられるやろうな。
俺は、ワンピースの裾を整えてやる。
「似合ってるで。もう、時間やし行こうや。」
そう言ってホテルを後にした。
◇◇◇
早朝の商店街。
人はまばらだ。
アーケードの下をヒロと歩く。
ヒロはおもむろに赤いチョークを出した。
壁に鳥居のマークを書く
空間が歪む。
ヒロが中に入る。私も続く。
驚いた。神辺の内宮だ。
こちらも人がまばらだ。
「これも大夢くんの魔道具なのか?」私が尋ねる。
「ちゃうわ。庶民は基本これで行ったり来たりしてるで。律儀に社の鳥居使ってるの華族だけやで。」
なんだと…。尊術派や他の華族の強い魔道具の忌避感で大和の魔法技術は他の先進国より大幅に遅れているかもしれない…。
神器一本に頼りすぎているのもある…。
私が顎に手を置いて考える。
「櫻…。今、仕事の事考えているやろ。」そんなことをヒロに指摘される。
「は?」
「えぇから行くで。」そう言って手を繋がれる。
グイグイと私を引っ張り歩くヒロ。
ゴツゴツとした手が私の手を握る。
耳が赤くなる。
白の壁にモスグリーンの縁の窓。
オシャレな美容室が見えた。看板に「Escale de Vénus」と書かれてる。
フランシア語で美の女神・ヴィーナスと書かれてるのがかろうじてわかった。
ヒロが店のドアを開ける。
「まいど〜、麗乃おる?」
え?こんなオシャレな店大丈夫かな?
「櫻、入るで。」
そう言って、ヒロに手を引かれて美容室に入店する。
店の鏡には布がかけられてる。
ホッとする。
「大夢!その子があんたの仕事仲間!?信じらんない!」中にいた人が叫ぶ。
そちらの方を見る。
髪を青く染めてオッドアイだ。
私と違って背が高くすらっとしてる。
着物を着崩して帯ではなくコルセットを巻いている。
腰には私が普段使っているシザーケースのような物がぶら下がっている。
そして、何本ものハサミを持っている。
かっこいい女の人だなぁ。
その人がすごい勢いで目の前に来た。
「私!春野麗乃!あなたは?」私の手を握って麗乃が聞いてきた。
「伊達櫻子です。」
「櫻子ちゃん!私と付き合わない?」
「へ?」
それが、人生最初に美容室での体験。
その後、このお店は私の行きつけになった。




