第二十四話 鹿島に住む人魚の里
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
キッチンのダイニングテーブル
ヒロと対面で座る。
目の前には家事当番表と書かれている紙。
そして腕組みをして貧乏ゆすりをしているヒロ。
私は、その紙とヒロを恨めしそうに見つめる。
「櫻子さん。そろそろ家事を分担しませんか?」
「お料理は…。私でええけど…。掃除と片付けが…。お洗濯もお風呂終わりに洗濯機を回して夜一緒に干してるからえぇやん。」私がポソポソ話す。
家事は出来ている方だと思っていたが、ヒロとの生活でやっぱり側仕えがいた生活に慣れていたことに気付かされた。
「そこ!掃除!整理整頓!学校ではどうしてんねん!」
「学校はお仕事やもん。」
「じゃ、家でもやれや。」
「うぅ…。」
「何も毎日じゃなくてえぇよ。毎日、掃除ロボットがロッキー乗せて稼働してるんやし、見えないところをやるんや。それを休みにやってくれって話。わかるか?」
「…はい。」
「あと見えない家事!」
見えない家事?
「麦茶少なくなったら作るとか、トイレットペーパーが残り少ないなら変えておくとか、そんなんがあんねん。」
ヒロはそこで大きく息を吐く。
「櫻子姫様、その辺りを気にして生活してくださいね!」
そう言って家事分担を割り振った。
あぁ、私って案外一人で出来ていなかったんやな…。
そして、お互い休みの日。
朝の訓練の後に少し掃除してから調査に向かうことにした。
人魚がまた攫われた。
なんで、紀州の人魚なんだろう?他の土地の人魚もいるのに……。
そんな事を考えながら奥の埃を手早く取る。
「わっ!」
ヒロが後ろから胸を揉んできた。
「やめてや!」
私がヒロに文句を言う。
「なんでや?もうええやん。」
「ええけど、いきなりは嫌や!」私が睨みつけながら話す。
ヒロがニヤリと笑う。
「触りまーす!」そう言って両手で私の胸を触るヒロ。
「なんやねんそれ!」私が体をくねらせ逃げる。
「いきなりが嫌なんやろ?じゃ、宣言してから触るわ。」
子供のように揶揄い気味に話してきた。
「そうやない!ダメ狐!」
「合法ロリババアのおっぱい触りまーす!」
「バカ狐ぇぇぇ!」ヒロの手が私の胸を捉える。
掃除を終えて玄関で靴を履く。
最近は、ヒロも靴を揃えるようになってきた。
あと、箸の持ち方も覚えたな…。
「遅なったやん。」ヒロがため息をついた。
「誰のせいだ!」私が睨む。
「櫻子姫様のせいでございます。」
「ダメ狐のせいだ!」
そんなやり取りをして任務へ向かった。
◇◇◇
空間移動魔法を使って出てきた。
が、少し上だ。
俺は、素早く反応して着地した。
櫻は隣で転んでる。
「いい加減学習しーや。」
「苦手なの!」
そう言って小さな手をパンパンと鳴らしながら土を払っている。
こんな小さな手で何人殺したんやろう。
「さて、大夢君。」櫻が仕事モードになる。
最近は、家では西の訛りが多いな。
「ここは美名部だ。」
そう言われて気が付く梅のいい香りが俺の鼻を掠める。
ちょうど収穫時期か…。
だから、認識阻害魔法をかけておけって言ったんやな。
周りを見ると梅の木の下に青いネットが張られている。
「ついてきたまえ。」櫻が飛行魔法を使った。
その背中を追う。
魔力を魔道具に流す。俺の体が自然と浮かび上がる。
「あれが、鹿島だ。」
櫻が小さな島を指差した。
コバルトブルーの美しい紀州の海にとても小さな島。
「その昔、ここには心中した男女がいてな。身分差から婚姻ができながったらしい。」
“身分差”その言葉が櫻の口から出るのが怖い。
俺は余計なことを考えないようにする。
最近の俺は小難しく考えすぎてる。
櫻子姫様の影響だろうか?
「お互いの足にしっかりと縄をして来世で一緒になろうとして海に飛び込んだ。すると鹿島の神域により、人魚となった…。今もその一族が住んでいる。」
「そこの人魚が攫われたんか?」
「あぁ…。どうやら子供が…。」
「人魚族の子供なんて絶対里から出やんのちゃう?」
「だから、我々が呼ばれたんだ…。」
俺らは二つに分かれた山の中央に出来た干潟に降り立つ。
砂地に足が取られる。
岩場の影にいた。
男の人魚だ。
耳が青いヒレになっている。青い髪の毛、整った顔立ち、金色の目。
上半身にサメの皮を加工した着物を着ている。
そうして下半身が美しい群青の色の鱗に魚のヒレ。
太陽の光に照らされてると白、桃色、茜色、黄色などの色で輝いている。
抜けた鱗とか持ってないかな…。
欲しいな。
「伝達者か?」人魚が話す。
小波のような声だ。
「あぁそうだ。」櫻がバックルに魔力を流し人魚に見せる。
俺も同じようにする。
人魚が確認すると話し出した。
「人間が出入りしている。人魚の里に。」
人語を話すことに慣れていないのだろう言葉がおかしい。
「出来るのか?海。魔法で。」
「海の中に人間が息をしながら入る魔法は難しい。それに入れたとしても陸上のようには動けない。」
櫻が顎に手を当てて考える。
「大夢君。魔道具だとどうだ?」
「河童の皿やヒレがあれば…でも、河童族の素材なんてそう簡単に手に入らんな…。もし、陸地みたいに動けるような魔道具作るならそれこそ何人も河童が必要や。現実的やない。」
そこで気がついた。
「「ガータロ!」」
櫻と俺の声が重なった。
櫻が俺を見る。
俺も櫻を見る。
「……どうやら高橋女史のところに行く必要があるな。」
「あぁ。」
人魚の里に人間が出入りしている。
櫻の肩に手を置いた。
空間移動魔法の光が俺らを包む。
コバルトブルーの海は、何事もなかったかのように静かに波打っている。
その海の底で何が起きているのか、紀州の地で何が起きているのか、
この時の俺は、まだ何も知らなかった。




