第二話 こじらせ忌守くんは同居を提案する。
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
待ち合わせ場所は、紀州城近くの公園だ。
俺は、ベンチに座ってタバコに火をつけた。
また、来なかったらどうしよう…。
資料には公爵家剥奪と書かれていたが、華族には違いない…。
ここまでの交通費だけでも払って欲しいな…。
その時ーーー。
空気が凍てついた。
今は、5月だ…。
こんな冷気はありえない。
俺は、腰に忍ばせているナイフをいつでも構えるようにする。
人影がゆっくりこちらに近づいてくる。
ゆるいウエーブがかかった黒髪。
人形のような顔。
大きな瞳。少し垂れた目尻。
「私の威圧で失神しないなんて…。元傭兵さんって凄いのね。」少女のような顔で魔物が話す。
直感でわかった。
コイツは、平気で人を殺せる。
でも…。少し悲しげだ…。
「ホンマにおった‥。」思わず俺の口から声が漏れる。
「何それ?私は、二次元とかの存在なの?」女が呆れた。
「いや、内宮から連絡来ても俺の素性知ってドタキャンしたり、住所送られて、時間になったら迎えに来い言うて現れへんやつ多かったから。」今までの嫌な記憶を説明する。
「そう。パートナーに恵まれなかったのね。でも、今回も恵まれてはないわ。私は、奥州の大震災を引き起こした一族の者だから。公爵家を剥奪された伊達家の者だ。」女がイラついた声で言う。
「難しい話は、知らんけど。資料を読んで思ったんわ。アンタ一人で頑張ってきた事やな。」
ここは愛想をよくしておかないと…
そして、俺は改めて女を見た。
そこには、やはり少女のような見た目をした怪物だ。
人を何人も殺してきた目を持つ魔物。
でも、俺も同じようなもんか。
「俺かて、忌守やで。自分で気にした事ないけど。」俺は女を正面から見る。
「私が生まれた地域は、あなたの職業や生まれた地域を差別する人はいない。むしろ、私の神器を手入れして欲しい。」女が手を差し出す。
「まかしとき。」
手を握り返し握手をした。
「私は、伊達櫻子。教育伝達者。」女が短く話す。
「俺は、田中大夢。訳あって現在無職。」
櫻子は、チラリと俺を見るとタブレットを出してきた。
次に伝達者のバックル。
それを俺に渡す。
「近日中に紀州に引っ越すこと、それに表向きの仕事も探しなさい。」
「大夢君の魔力を流しなさい。」
俺は櫻子に言われた通り、魔力を流す。
「登録完了。これで大夢君は紀州伝達者だ。歓迎する。」全く歓迎されてる感じがしない。
「次に仕事の話をする。ここでは、なんだから私の家に来てほしい。車を出してくれないか?」
「ちょっと待てえや。次々と…。」矢継ぎ早に指示をされイライラする。
「時間は有限だ。せっかく、大夢君が浪華からこんな田舎に来てくれたんだ。有効活用しよう。」冷たい声で指示をする。
仕事が出来そうな女だな。
仕事しないでぶん投げてくるよりはマシか…。
「へいへい。車を出しますわ。」そう言って俺は年季の入った軽自動車の鍵を開けた。
運転席に乗り込むと櫻子が助手席に乗る。
俺が、ギョッとする。
「なんだ?」
「後部座席じゃなくてえぇのか?」
「道案内しづらいだろう。」櫻子が眉を顰める。
こいつ…。ホンマに華族か?
俺は、櫻子の案内で一軒の古民家に着いた。
「ここがお前の家なん?」
「あぁ」
古臭くてとても華族の令嬢が住んでいるとは思えない家屋。
いくら剥奪されたといえ金ぐらいあるだろうに…。
中に入る。
俺はさらに驚く。
家具がない。
いや、机と軍用の簡易ベッドはある。
それ以外何もない。
ミニマリストなのか?
しかし、ホワイトボードには紀州の魔法犯罪のあらましが記入されている。
小さな机にはハイボールの空き缶と弁当の空き箱・灰皿には吸い殻がある。
女の部屋じゃねぇ。
「ここは、事務所かなんかなん?」俺が聞く。
「私の部屋と言っただろう?」
そう言ったら櫻子は机の前にあるゲーミングチェアに座る。
基本そこで仕事しているのだろう。
椅子だけは豪華だ。
足を組んで俺を見上げる櫻子。
「なぁ…。俺もここに住んでかまん?」思わず話す。
「…かまん?」
「あぁ、かまわないか?を方言で“かまん”って言うんよ。」
「俺、猿に擬態しているサトリが相棒なんやけど、アパートの契約中々出来なくて。ここってアンタの持ち家なら居候させてほしいんやけど…。サトリ嫌か?」何故かそんな申し出が俺の口からするすると出てきた。
「サトリか…。」櫻子が顎を撫でながら考え込む。
「やっぱり、嫌か?」コイツもあかんかな?
「いや、大変結構!仕事が捗りやすくなる。」
そう言って怪物の目でニヤリと笑った。




