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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第十七話 戦場帰りのお華族様

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日18時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

空間移動魔法で洋館が立ち並ぶ狭い路地へ出る。


今度は、ちょっと上じゃない。


周囲を見渡す。


タイルが張られた狭い路地。


店先にはためく旗に「神辺かんなべプリン」の文字が見えた。


神辺かんなべだな…。


櫻子が伝達者のバックルに魔力を流している。


「ついて来い。」そう言って歩き出す櫻。


その言葉に従う。


こっちは晴れでよかった。


認識阻害魔法を使っている俺らは、観光客に気をつけながら歩く。


ここ…トーマス坂だな。


特徴的な風見鶏がシンボルの洋館の隣に小さな南野天満の社がある。


人気がないことを確認して魔法を解除した。


「よかった。すぐ来てくれるらしい。」櫻がバックルを見ながら話す。


「誰と待ち合わせなん?」


お願いだ。説明してくれ。


丸山晴人まるやまはるとさん。神辺の警ら伝達者だ。」


櫻が信用するんだから仕事できるんやろうなぁ。


しっかし、お華族様かぁ…。


俺、大丈夫かな。


風見鶏の館の前に広がる広場へ足を運ぶ。


「神辺は初めてか?」櫻が尋ねてきた。


「俺は元は神辺かんなべ生まれや。」


「そうなのか?」


「あぁ、大震災で家が無くなったから浪華に引っ越したらしい。」


「年齢的に記憶がないのか。」


神辺大震災は俺が2歳の頃の話だ。


一個も記憶がない。


「櫻子さん、お待たせしました。」1人の男が声をかけてきた。


俺と櫻は、振り返った。


小綺麗なスーツを着た、30過ぎの男が立っていた。


足の運びでわかる。


この男も戦場を知っている。


鼻筋が通った薄い顔を観察する。


少し濃く太い眉に傷がついている。


俺より若干背は低いが細身の体は筋肉質なのがわかる。


「急にお呼びだて申し訳ありません。丸山さんの力が借りたいです。」櫻が話す。


「場所を変えましょう。ここでは話しにくいでしょうから。」そうして歩き出した。


男の後についていく。


この人も簡単に人が殺せるな。


上品に髪の毛を後ろに流している。


服装も仕草も、どこか育ちの良さを感じる。


けれどーー目だけが違った。


あの目は、戦場で死体を積み上げて来た目だ。


まぁ、俺も似た目をしているんやろうな。



南野天満の社。


小さな祠の隣の階段。


丸山は二、三段上がると、革靴の先で石階段をトントンと鳴らした。


隣の社の鳥居の空間が歪んだ。


丸山と櫻が中に入る。


俺もその後に続く。


鳥居を潜ると人々が行き交う大通りに出た。


空を見上げる。

雲とも霧ともつかない白いものが渦巻き、そこから煌びやかな光が溢れ出てる。


行き交う人々に目を向けると和洋折衷の服装がほとんどだ。


着物の人も洋服の人もいる。


目の前を白蛇を連れた商人が籠を持って横切る。


建物も和洋折衷。


しかし、洋館が多い。その建物には「八咫烏神具店」「マジックストーンショップ」「化け猫酒場」などの文字が書かれてる。


神辺かんなべの内宮だ。


久々だな…。


内宮は、空間の歪みにひっそりとあるので道が狭い。


平民は基本外宮に家を持つ。


人々にぶつからないように進み、とあるコーヒーショップに来た。


丸山が店員に奥の部屋の用意をと短く話している。


俺…。ここにいてええかな?


ロッキーもおるし…。


「あの、丸山さん。初めましてで申し訳ないのですが、俺はここと場違いなようです。席を外しますね。」そう言って店を出ようとしたが…。


「ダメだ!ロッキーが覚った記憶と君の道具が必要だ!」そう言って櫻に手を掴まれた。


驚いた様子で丸山がこちらを見た。


「君の名は?」丸山が俺に尋ねる。


「田中大夢と言います。魔道具職人です。伊達さんと紀州で伝達者をしています。」


これで察してくれ。


「かまんで、こっちにきぃ。」丸山がいきなり西訛りになる。


そうして、扉を開けてくれた。


「え?出身こっちですの?綺麗な標準語使っていたやないですか。」俺が驚いて尋ねる。


「俺は、そんなかしこまった奴やないんや。華族学校卒業してからずっと戦場におった。」


そうして、部屋の中に入ってテーブルにつく。


でも、所作が綺麗だ。


俺も部屋の中に入る。


「見たところにぃちゃんも結構人殺してるな。動きと目でわかるで。」そう丸山が話す。


「元傭兵ですわ。」話しやすい人だ。


「大夢君は優秀だ。仕事でも助けられてる。」櫻が話す。


そして櫻も席についた。


そんな櫻の言葉に驚く丸山。


「まぁ、田中もつったとらんと座りや。」丸山が俺を手招きする。


俺は、恐る恐る座った。


櫻は天狗攫いと思ったら魔術師が外宮の人を攫っている事を話す。


そして、ロッキーの覚った記憶を見るのに俺が作った魔道具を出す。


サトリの毛から紡いだ糸で作った布を出す。


テーブルクロスほどの大きさのそれにロッキーが魔力をこめて見た物を映し出す。


そこには、魔法を使い人を攫う女の様子が映されていた。


女がスマホを操作してる。


1人の男のやってくる。


魔法で眠らせる。


そして一瞬で消える男。


しかし、空からの映像で女の顔がよく見えない。


「すごいな…。こんな魔道具あるや。」丸山が驚いている。


「俺の自作です。」


「あんたこれで、特許とりいや。伝達者なんてやらんでも暮らせるで。」


丸山が驚愕した目でこちらを見る。


「買ってくれる人がおらんですわ。」


「魔道具への忌避感か…。科学は良くて魔道具あかんって尊術派そんじゅつはの奴らはチグハグよな。」丸山が腕を組む。


話がわかる人だな…。


櫻以外にもこんな華族おるんや…。


「丸山さん。ここからが本題なのですが、紀州のこの事件、丸山さんも調べていただけませんか?」櫻が切り出す。


「管轄外やからな…。でも、失踪者リストで顔と日時は神辺でも紀州のものが見えるからどうにかしてみるわ。」そこで、タバコを出して火をつけた。


ベルを鳴らす丸山。


「こちらの方々にコーヒーを。」


「かしこまりました。」


店員が出ていく。


「俺は、魔力が少ない。だから、こっちでどうにかしてきた。」そう言って自分の頭を指でトントンと叩く丸山。


「でも、それも限界があるし、まだまだや。神辺でなんかあったら助けてくれや。」


そう言って俺に手を差し出してきた。


「その時には力になりますよ。」


そう言って固く握手をした。

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― 新着の感想 ―
伊達櫻子と田中大夢の関係性が、少しずつ変わっていく様子が面白いドラマです! 丁寧なドラマ描写があるからこそ、二人の変化に好感と今後どうなるのか興味をひかれます。 続きも楽しみにしてます。
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