第十六話 同じ釜の飯と天狗攫い
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
私たちは、遅めの夕飯を食べている。
食卓には温め直した生姜焼きと味噌汁と白米が並ぶ。
野菜が欲しいな。千切りキャベツはあるがもう少し野菜が欲しい…。
そして、私には量が多い。食べる前に大夢の皿に自分の生姜焼きを移す。
なぜか大夢は不貞腐れてる。
そして、私は説明しはじめた。
「高橋女史曰く…。人魚やガータロが捕獲されて売り飛ばされる可能性がある…。そう言ったのだ。」
「そんな会話してへんやん。」
「宣教師…。大和がなぜ鎖国して聖ルクス教を邪教として排除したか…。大夢君はしっかり習ったか?」
「そんなの覚えてへん。」不貞腐れながらご飯を食べる大夢。
まぁ、こんな時間になってしまったしな…。
「今から400年ほど前、聖ルクス教の宣教師は、布教という名目で大和人や妖、亜人を奴隷として貿易したかったのだ。」
「は?大和人が奴隷って…そんな事あったん?」
「当時としては、他国の平民を奴隷にするのは普通だ。特に欧州は陸続きだからな。その仕入れ先を宣教師が調査。そして、商人が売買する。そんな時代もあったのさ。特に亜人はアジア諸国にしかいないからな。あちらには、エルフがいるが、魔力が高く、そう簡単には捕まらない。その点、大和人や亜人は魔力もそこそこですぐに捕まるからな。ちょうど良かったのだろう。」
「…おっかない話だな…。」大夢が箸を止めて話を聞く。
「今とは倫理観が全然違うからな…。」私は大夢が作ってくれた生姜焼きを食べる。
ちょっと甘いな…。
「それで、櫻はこんな時間になるまで何を調べてたんよ。」
「人魚の里とそこで起きた事件などを…。後は、失踪事件だな。人間の。」
「人間の失踪事件?」大夢が眉を顰める。
「あぁ、紀州の…。老人が中心に失踪事件が多発している。しかし…。認知症の可能性が強い。」
「そりゃ、紀州は老人が多いからな。」大夢が食卓に肘をつく。
それを私が薙ぎ払う。
「……。」
いつもは減らず口を叩くが今日はお利口さんだな。
定期的にこのダメ狐を高橋女史のところに連れて行こうか?
それだと高橋女史に迷惑か。
「後は、不老不死…。大夢君が教えてくれただろう?人魚の肉は赤い……と。」
「あぁ。」
「悲しいかな。莫大な財産や地位をとった権力者とは次に望むのは“不老不死”だ。」
「…俺にはわからん。」大夢がポツリと話す。
「私もわからない。わかりたくもない。しかし、以前高橋女史が教えてくれた。そのような者が定期的に現れて………そして、狙われるのだと。」
私は、時間の理から外れて生きる高橋女史を思う。
そうして、孤独に生きている静かな顔を思い出す。
長く生きすぎたのだろう。
もう、嘆きも忘れたような凪のような涼やかな顔を…。
私は、味噌汁を飲む。
塩辛いな…。
でも、食事を待ってくれたんだ…。
文句は言ってはいけない。
「大夢君…。先に食事を取っていても良かったのに。明日も仕事であろう?」
私は、大夢の切れ長の目で無骨に髭を生やしている顔を見る。
「あのな…。俺らはバディなんやろ?」
「あぁ…。」
「バディっつーんは、家族だ。あ!ファミリーの方の家族やで。」大夢が呆れながら話す。
「……。」私はそれを黙って聞く。
「だったら一緒に飯食べるし、相手を待つやろ。」
「それでは、非効率ではないか…。」
「そう言うもんとちゃうんよ。なんて言うんかな。“同じ釜の飯を食った仲”ってやつや。」
言葉の意味はわかる。
しかし…。
私は、家族というものがわからない。
「そうか…。かたじけのうございます。」私が箸を置いて話す。
自然と礼が出る。
「じゃ、おっぱい揉ませてや。」大夢が白米をかき込みながら話す。
「嫌いだ!このダメ狐!」私が吐き捨てるように話す。
そうして、食卓を片付けて、私達は就寝した。
◇◇◇
ぶらくり商店街は寂れ、ほとんどの店が閉まってシャッターが降りている。
ここで元気に営業しているのは場外馬券場とパチ屋だけだ。
季節は、梅雨。
今日は、雨が降っている。
寂れた商店街には人がまばだ。俺らはそこを歩いている。
「天狗攫いが起きている。」そう短く櫻が説明した。
今日は、ロッキーもいる。
俺の肩に乗ってはいるが、昼間なので認識阻害魔法を使っている。
「大夢!」ロッキーが天を仰いだ。
目を凝らす。
天狗がアーケードの屋根からこちらを伺っている。
「櫻。」
俺は、櫻の肩をトントンと叩き天狗の方を見る。
天狗もこちらに気がついたようだ。
他の人々に気がつかれないように降りて来た。
「ついて来いって言ってましゅ。」
ロッキーが天狗の心を覚る。
「あい、わかった。」櫻が短く言う。
周りの人に気がつかれないよう認識阻害魔法を使う。
天狗がふわりと浮かび上がる。
そうして、天狗の背中を追いかけた。
たどりついたのは、紀の川のほとり、大きな橋の下だ。
「天狗攫いをしているのは貴殿か?」櫻が話す。
交渉は櫻に任せた方がいい。
「否。此度の件。我々ではない。」天狗が口を開く。
重く低い声だ。
「本当でしゅ。」ロッキーが話す。
「人が人を攫っているのだ。我々のせいにしてほしくない。」天狗が話した。
「人が?」
「魔術師が外宮の人を攫っているのを見たそうでしゅ。」ロッキーが再び覚る。
「後は、その者の記憶を抜いてくれ。わしはこれで…。」
そう言って、天狗はどこかに消えた。
「大夢君、空間移動魔法を使う。肩に手を置きたまえ。」
真剣な顔の櫻が話す。
俺は、言われた通りにした。
なんだが、スゲー面倒な事になりそう。




