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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第十四話 伝説の八百比丘尼

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日18時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

黒板に「スイミー」と主題を出す。


学習係が私の代わりにプリントを配りはじめる。


朱書き教科書と自分のノートを教卓に置き授業をはじめる。


自分の口から、範読はんどくの声がするすると漏れる。


そんな自分をもう1人の自分が見ている気分だ。


心がここにない。


先日の大和人形の事件を思い出す。


大夢がいなかったら危なかった。


抱き寄せられた時の目を思い出す。


切れ長で、瞳が少しブラウンの目。


「櫻!目を覚ませ!」とかけられた声


私を左手で抱き寄せ、ハンドガンを撃つ横顔。


固くたくましい体。


授業が進む。


しっかり、学び合いしてくれる。


あまり、話したくない。


お利口さんでよかった。


休み時間に入る。


私は、あまり外遊びをしたくないタイプの教師だ。


したい人がしたらいい。


宿題の丸つけをする。


「伊達先生?」児童の1人、紀子が話しかけてきた。


「どうしたの?」私が笑顔で話す。


「はい!お手紙!」そう言って折り紙の手紙を差し出してきた。


「ありがとう。」にこやかに微笑み受け取る。


先生!大好き!と書かれてる。


「好き」と言う言葉を見て大夢の顔を思い浮かべる。


そして……。


「あ!ごめーん!わざとやないでぇ。」と言ってゲラゲラ笑いながらわざと尻を触ってくる大夢。


「合法ロリババア!」と悪口を言ってくる大夢。


嫌いだ!あんな奴!嫌いだ!


その後、仕事に専念して、職員室へ帰る。


「伊達先生ってマッチョ好きなんですか?僕、ジム通おうかなぁ。」と遠藤が絡んできた。


この遠藤という男も鬱陶しいな。


氷漬けにしてやりたい。


そんな感じで1日が過ぎる。


あぁ、今日も帰ったら任務だ。


今日は海草郡にいる高橋女史に会いに行かないといけない…。


なんでも相談があるとか…。


厄介ごとじゃないといけないな。



◇◇◇



俺は、櫻の指示に従って車を走らせる。


長いトンネルを抜けて右手に庭園が見えた。


「高橋女史について話しておこう。大夢君は八百比丘尼やおびくにの話を聞いたことあるか?」


「人魚の肉を食べて不老不死になったという尼さんの話やろ?」


確かそんな話だったはず。


「その人魚の肉を食べたのが、高橋女史だ。」櫻が話す。


「お伽話ちゃうんや…。」俺がそんな感想を話す。


驚いた。マジで存在するんか。


でも、確か人魚の肉は猛毒で食べたらそれこそ“なりそこない”になるんやったはず…。


俺は、その疑問を櫻にぶつける。


「でも、人魚の肉は普通食べたら“なりそこない”になるんちゃう?」


「あぁ、普通はな…。高橋女史は、ある日、旅の僧侶を助けた。その僧侶が持っていたのが、人魚の肉でな。助けたお礼だからと僧侶から“魚の肉”をもらった。竹笹に包まれた肉は白い餅のようで薄桃色をしていたそうだ。高橋女史は知らずに食べてしまい、望まない形で不老不死になってしまった。」


「で、今からその人に会いに行くん?」


「そうだ。大和の歴史と人々を見てきたお方だ。失礼のないようにしろよ。」


あんまり喋らんようにしよう。


しかし…。


「なぁ、櫻。その人が食べたのホンマに人魚の肉なんやろうか?」


「どういう意味だ?」


「魔道具作る時に人魚界の罪人は、こっちに時々流れてくるんよ。」


「そうなのか?」櫻が眉を顰める。


「ほんまごく稀にな。オークションで見たことあるんやけど。人魚の肉は赤いで。そんな白身魚みたいな色はしとらんわ。」


「………。」櫻が顎に手を置いて悩む。


「まぁ、今は関係ない話や。もしかしたら、昔の人魚は白かったんちゃう?」


そうして、俺は車を走らせる。


細い道を進み櫻が指定した家にやって来た。


立派な大和家屋だ。


質のいい木を使った門をくぐり、石畳のアプローチを歩く。


庭も立派だ。木々が綺麗に切り揃えられている。


櫻が、大和の伝統的な格子戸に取り付けられた呼び鈴を鳴らす。


ゆっくりと扉が開く。


「櫻子さん、お待ちしておりましたよ。」


中から出てきた女がそう言った。


黒のロングストレートの髪、涼しい目元で静かな表情。


その女がこちらを見る。


黒い瞳が俺をとらえる。


「あなたが、櫻子さんの相棒さん?」


「はい。田中大夢と言います。」


俺の背筋が自然と伸びた。


「頼もしそうな方ね。中へどうぞ。」


そう言って屋敷に通された。

朱書き教科書…児童・生徒用教科書に指導のポイントなどを赤字(朱色)で書き込んだ教師用の指導書


範読はんどく…教師が手本として音読すること


参考文献・『紀州怪談』田辺青蛙(竹書房)


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