第十二話 東の姫と西の男
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
毎日18時更新!
時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
「妖怪が売られている」そんな情報が入ったのは6月に入った頃の話だ。
日方の街で屋台を引いた男が、妖怪と不思議な液体が入った大きな茶色い瓶を売っているらしい。他にも駄菓子を売っており、子供たちはもっぱら駄菓子を買っているが、好奇心から妖怪を買った子供が病気を患う…。そんな噂だ。
「こんな時に警ら伝達者がいると楽なんだけどな…。」私がぼやく。
「でも確か俺らの他に伝達者おるよね?」大夢が尋ねる。
「教育伝達者の大杉さんな。ほとんど仕事しないよ。有事の時には動くとは言ってるけど、それがいつのことだか…。その他にも一応、引退間際の伝達者や療養したい人が紀州には集まってる。」
「華族の保養所なん?紀州って?」
「ここは、結界も強いし、魔素も多いから…。」
「そういや、櫻もここでのんびりするって言っとたな?」
「………。」
私は黙る。内乱の影響で軽いPTSDになっていたと言えない。
中央の任務を行なっている時に記憶がなくなる。
私の目の前には必ず死体がある。
怯える仲間の目。
血まみれの私のハサミ。
そして、真っ赤に染まった私の両手。
「まぁ、ええわ。その屋台見つけようや。どんな奴が引いているん?」
「若い、爽やかな青年と報告が上がっている。」
「ヘぇ、屋台なんておっさんが引いているイメージやけどな。」
しかし、屋台は見つからなかった。
その事件は未解決として処理して終わってしまった。
もしかしたら、私はこの時大事な何かを掴み損ねたのかもしれない。
◇◇◇
俺らは、訓練場で訓練している。
しかし…。
「なぁ、櫻。自分のホーム確認はした方がえぇで。」
「?」櫻が小首を傾げる。
「これ、鏡やろ?」
俺は、そう言って布がかけられている壁を指す。
「……そうだが……。」
「ちゃんと鏡で自分のホームの癖や動きを確認した方がえぇ。」
「大夢君が教えてくれるから良いではないか…。」櫻が苦しそうに言葉を紡ぐ。
「俺だけじゃあかんやろ。櫻は賢いんだから、自分で分析できるやん。」
「………。」黙り込む櫻。
俺は、ため息をつく。
「もう、これ取るで。」
そう言って布を取ろうとしたらーーー。
櫻が訓練場から走って出て行ってしまった。
ダンベルの影からロッキーがチョロチョロと出てくる。
ロッキーの大きな目から涙が溢れていた。
「野次馬するのやめておくわ。」
ロッキーがコクンと頷く。
そんなロッキーと血も涙もなく妖を退治するのに鏡に怯える櫻を思い出す。
なんか知らんけど…。
あいつも大変なんだな。
◇◇◇
私たちは節約の為に自炊をしている。
今日は、たまたまお互いの仕事がやはく終わったので二人でキッチンに並んでいる。
「しっかし、櫻ってなんでもできるなぁ。」
私が包丁を動かしながら玉ねぎを切ってる様子を大夢が覗く。
「魔法薬を調合するのにナイフや鍋は使う。それに料理は嫌いじゃない。」
そこで、気が付く。
「そうだ!」私が大夢の顔を見る。
驚く大夢。
「回復薬!調合したらいいんだ!ここは紀州だ!材料なら揃う!」
「調合するのはえぇけど資格大丈夫なん?」大夢が心配する。
「私は、特級魔術師だ。魔法薬の調合も許可されている。」
そう言いながら、玉ねぎを切り終え、ジャガイモの皮を包丁で剥く。
大夢はピューラーを使ってジャガイモを剥いている。
「………あんた、ホンマになんでもできるな。」
「そんな事ないアルビオン語は苦手だ。世界共通語なんて言われているが、文法が簡略的すぎるし、不規則動詞は意味がわからない。オノマトペもないのも嫌いで苦手だ。」
私は小難しく出来ない言い訳をする。
「アルビオン語なら大夢君の方が出来るだろう?この前も字幕なしでドラマ観ていたじゃないか。」私が話す。
「あっちで働いていたからあらな。それに、喋りたくなるなら女作ったらえぇんよ。」
「は?」私の手が止まる。
「現地で大和のアニメが好きとか言う適当な女引っ掛けて、“これ、どういう意味なん?”みたいなことをお互い教えあうんや。それに性処理も出来て一石二鳥やな。」
そう話しながらニヤリとこちらを見る。
………信じられない。
恋人を性処理って……。
「あ!櫻子姫様には刺激が強すぎましたかぁ。」
大夢が揶揄う。
嫌いだ!
仕事じゃなければ今すぐにでも神器のハサミで縁を切ってやる!
私たちは、肉じゃがを作る手を動かす。
「なんで、肉じゃがなのに豚肉なんよ。」
「肉じゃがは豚肉であろう。」
「帝都風ですなぁ。」
酒と醤油とみりんを入れた。
「まぁ、こんなものかな。」私が味見の小皿を大夢に差し出す。
「東の味なんよなぁ。」と悩み砂糖をどばどば入れて、さらに醤油まで入れはじめる。
「それでは、味が濃いではないか!」
「こうしやんと味ないやん。それにあんたの味噌汁、出汁の味しかせぇへん。」
「味噌汁は、箸休めだ。塩辛い方がおかしいだろう!?本来、食卓に茶は一緒に出さない!最後に飲むものだ!」
「庶民はそんなこと気にしやん。大体なんやねん。白米から先に食べろって何のルールやねん。」
「大和食のマナーだ!」
私が大夢をピッと指差す。
「へいへい。」
大夢が軽く返事して小皿に肉じゃがの汁をとる。
「これが、西の都の味や。」
私は、恐る恐る一口飲んだ。
悪くないかもしれない。
東西肉じゃが戦争は、毎回我が家で繰り広げられてます。
まぁ、最近は私が旦那に合わせて作ってますがね。
がだ、雑煮だけは譲らねー!
なんだ、白味噌に金時人参と大根だけって!
醤油ベースに具沢山で餅は四角だ!
っと言う感じで私は、毎年二種類の雑煮を作ってお互いが相手の雑煮啜って首傾げて器を返します。




