第30話 謁見は最高敬語
「殿下とは17才のときに引き合わせていただいたんだ」
「なるほど」
私の話の最初に対しての、ディーヴァくんのその返答が少し素っ気無く感じたので私は
「あ、ごめん……ちょっと盛り上がり過ぎて暴走してしまったけど……聞きたくないよね他人の思い出話なんて」
ちょっと「やっちゃった感」でそう言うと。
彼は首を左右に振り
「いえ、そんなことはないです。アスカさんは僕と一緒に魔族全てを討伐し、魔界に乗り込んでその根源を断つための戦いの同志なんです。プライベートのことも把握して結束を強めるのは全然変じゃないですよ」
暗に続けてくれ、とその態度で示してくれた。
ディーヴァくんに気を使わせてしまった……。
一瞬、語るのをやめようかと思ったけど
(ここでやめたら彼に罪悪感を抱かせてしまうかもしれない)
そう思ったので。
乗っかることにした。
「初めて殿下に引き合わせていただいたとき、この方が将来帝国の皇帝に即位するのは当然だと思った……そのくらい、皇位継承者としてのオーラを発してる方だったんだ」
「そう……ですか」
私の語りにディーヴァくんは微妙な表情をしている気がする。
私は別に嘘は言ってないけど、客観的に見て私はうっとおしい話をしているのかもしれない。
お前の感動話など知ったことではない、みたいな。
でももう遅い。
(毒を喰らわば皿までだ)
私は話を続けた。
その後2人で、護衛も付けずにお忍びで宮殿外の街に行き。
一緒にお芝居を見たのだけど……
その道中で
「私が万一殿下の御命を狙う者が現れたとしても、私が殿下を守るんだと思って警戒していたら」
突然、腕を掴まれた。
そのとき、私は「何事!?」と思ったけど。
その一瞬後。
私は目の前に小さい子がいることに気づいて無くて。
そのまま前に進んでいたら、蹴飛ばしていたかもしれない、というのに気づいた。
その小さい子は私に危うく蹴飛ばされそうになっていたかもしれないことに気づきもしないでどこかに行ってしまったけど。
そのとき殿下が
「……気をつけてください。あなたは将来国母になるんです。民は全て自分の弟妹、いや子供だと思ってください」
そう囁いてきて。
そのとき私は「この人は正真正銘の王者の血統の方なんだ」と思って、感動に震えた。
その思い出を一生懸命語った。
それを聞いてくれたディーヴァくんは
「そう……ですか」
ぎこちない態度で。
私は「やってしまった」感が強くなる。
なので
「ディーヴァくんはどういう生活を送っていたの?」
失敗を誤魔化す意味と。
純粋な興味で。
私はディーヴァくんにその生い立ちを訊ねる。
その私の言葉に
「ええと……言わなきゃだめですか?」
なんだか彼は戸惑いをみせる。
でもさ、ここで
嫌なら別に良いよ、とは言えない。
それは流石に失礼だと思うし。
なので
「うん。できれば」
そう返す。
「……分かりました」
すると彼は覚悟を決めたらしく。
話してくれた。
彼は神の鎧を継承する血筋に生まれ。
継承者に選ばれたのは7才のとき。
同時に家の継承者にも選ばれて。
今に至るらしい。
その家だけど……
彼は両親とはほとんど会わず、自分の両親に直接会ったのはその7才のときらしい。
それを聞いて
(えっ、酷い。親なのに子供に興味が無いってことなの……?)
一瞬そう思い。
そして両親に育てて貰っていないなら一体どこで育ったんだと気になったので
「それまではどこで暮らしていたの?」
そう訊ねると
「……乳母がついており、そこで育てられていました」
そんな返しが。
さらにこんなことを言った。
「僕以外にも兄弟姉妹は沢山いたと思いますが、最終的に選ばれたのは僕で。選ばれたからこそ両親に謁見できたんです」
謁見って。
どういう家だよ……?
それに謁見って皇帝や皇后陛下相手に使う言葉だよ?
言葉の使い方間違ってるよ。
なので
「謁見って、言葉の使い方おかしいよ。それぐらい緊張したってことだろうけど……それ、皇族方相手に使う言葉だよ?」
ちょっと迷ったけどそう指摘した。
するとディーヴァくんはハッとした表情をして
慌てて
「すいません。仰る通りですね……ついうっかり」
うっかりって……
この場合の言い訳として、変じゃない?
普通はうっかりそんな最高敬語使わないんだから。
まあ……人間、意図せず変な言葉が出るときもあるし。
そう思ったので私は
「あっ、そろそろ角ウサギの肉が食べごろだよ。食べよう」
そう言って、焚火で焙っていた肉を手に取り、ディーヴァくんに手渡した。




