第31話 ルーイエの街は
そして鎧着装による飛行能力で大幅ショートカットし。
その後、歩きと馬車を交えながら海の街ルーイエにまでやって来た。
ルーイエの街は……
殺気立っていた。
明らかに兵隊と思われる人間がそこらじゅうをウロウロしてて。
どの顔も緊張していた。
緩い雰囲気が欠片も無い。
そんな街の様子を見て来て。
冒険者の店に入って。
借りた宿部屋でふたりで会話。
私がベッドに座り、その傍にディーヴァくんが簡易丸椅子を持ってきて向かい合って。
私は言った。
「さすがにこうなるか、って感じだったね」
そう言わざるを得ない。
何せ沖に魔族クトゥルーが築いた要塞があるらしいから。
「……ここの海上交通が死んでるらしいですからね。軍も本気になりますよ」
ディーヴァくんがそう私の言葉に続けるように言う。
「ルーイエの海上交通が死ぬということは、鉱物資源の帝国内の供給路が途絶えるということです。無視できません」
……私も同感だ。
海路での運搬は陸路の比じゃない。
安価で大量に運べるってことの大きさは馬鹿にはできない。
だから軍は本気でなんとかしようとしてる。
「とにかく、詳しい情報だけど……この街に駐留してる軍に訊きに行くの?」
カダフス山での戦いで、実は神の鎧の継承者は国と協力関係にあると教えられたから。
それもアリかなと思ったんだけど。
ディーヴァくんは首を左右に振る。
「それは出来れば避けたいです……あくまで僕らの活動は秘密裏に、が基本なので」
「そっか」
……何か色々あるんだろう。
私は鎧の継承者としては全然経験も知識も足りてない。
新米も新米。
だからここで異議を唱えることはできなかった。
でもさ。
「じゃあどうするの?」
……だからといって情報を取らないわけにはいかないでしょ。
私のその言葉に
「この街の冒険者の基本情報を探りましょう」
ディーヴァくんはそう返して来た。
冒険者。
所謂何でも屋だ。
モノ探しから、怪物の討伐、商人の護衛。
頼まれれば何でもやる人たち。
主に普通の仕事を務められない、社会からはみ出した人間が就く職業。
世間ではそう思われている。
彼らは主にこの冒険者の宿で活動している。
それは何でも屋なりに、仕事を請けるための後ろ盾がいるからだ。
その人物の信用度を誰が保証してくれるのか? という。
ここに名前を登録し、常連客となっている冒険者は「仕事を確実に遂行してくれる信用がある」冒険者として扱われる。
だからここでなら、冒険者が知っておくべきこの街の情報を得ることが出来るだろう。
私たちは部屋を出て、1階のホールに出て。
そこの依頼掲示板に貼られた依頼を確認する。
そこには……
「……あんまり依頼が無いね」
「多分、町の状況がこれだから、依頼の方も減ってるんだと思います」
ある依頼は
野草採取。
馬車護衛。
ゴブリン退治。
……海の街なのに、海関係の依頼がひとつもない。
陸の依頼ばかりだ。
(海を軍が押さえているから無いんだろうか?)
憶測だけしていてもしょうがないので。
「すみません。依頼に海のものが無いのは、海上要塞のせいなんでしょうか?」
私たちは、この冒険者の店のマスターと思しき男性に話し掛ける。
するとその男性は
「ええ、キミら見ない顔だけど、新人かい?」
「ええまあ。一応そうです」
男性の言葉にディーヴァくんが対応。
その男性は私は一瞥しただけで終わったけど、ディーヴァくんに関しては明らかに驚いていた。
いくら誰でもなれる職業であっても、この年齢の少年が冒険者をしようとするのは珍しいってものじゃないのが原因だろうか?
だけどそれは自分には関係のないことと思ったのか、特に何も言わず
「……まあ、そうだね。今、海に船を出せるのは軍だけになっているから」
ディーヴァくんの質問に答えてくれる。
何でも、今はこの街は夜間の出歩きが禁止されていて。
船を出すことには軍の許可が要る状態になっているらしい。
なので海関係の依頼……鮫討伐、海上護衛、漁業支援のような依頼が無いらしい。
「でも新人さんなら頼める依頼に限りがあるからね。知ってると思うけど」
護衛関係は信頼できない冒険者にはどのみち頼めず、そして海関係ではそれが一番多いらしい。
だから元々、新人には関係のない話だと。
「じゃあ、軍の仕事は無いんですか?」
そこでディーヴァくんが追加の質問。
護衛が無理なら軍はどうなのかと。
傭兵だと信用が無くてもこなせる仕事があるはずだ。
だからそこを訊ねた。
すると男性は
「……今、軍は傭兵としての冒険者は雇っていない。理由は、クトゥルー配下の眷属が軍に混じって破壊活動をすることを恐れているからだ」
教えてくれた。
今この街で起きている問題について……




