第26話 ハスターとの戦い
「着装!」
私たちは迷わず宙に召喚陣を描き、神の鎧を召喚し着装する。
召喚され、実体化した鎧が私たちの身体を瞬時に覆い尽くし。
瞬く間に戦いの姿を完成させた。
それを目にし、ハスターは愉し気に
「ふふ、本当に2つ目の鎧を用意して来おった! 俄然やる気が出るというものよ!」
そんなことを言った。
私たちに怯えたり、憎悪の気持ちを向けたりせずに。
そこには喜びすら感じられた。
(何故?)
わけがわからない。
ハッキリさせたかったが、コイツは言った。
嘘吐き呼ばわりされたら面倒だからこれ以上は何も教えない、と。
ならばこのモヤつく気持ちは飲み込むべきなのか。
いや、そうするべきなんだろう。
仮にもコイツは伝説で語られるほどの化け物なんだ。
だから
「焼き尽くす火炎よ!」
私はハスターに向けて、火炎放射の魔法を発動させる。
突き出した私の左手から凄まじい火炎が噴出し、ハスターを飲み込んだ。
だが
「なっ!?」
その炎はハスターを包んだ瞬間に消えていく。
まるで、そこだけを見えない壁が守っているかのように。
愕然とする私にハスターは愉し気に言った。
「今現在のおヌシらの科学技術でそこまで到達しているかどうかは知らぬが、酸素を遮断すれば火炎の精霊魔法は届かぬぞ」
そんなことを。
(酸素……?)
科学は分かる。
錬金術の別名だ。
だが酸素は分からない。
「酸素って何……?」
思わず出た私の問いに、ハスターはこう答える。
「モノが燃えるときに必要となる気体じゃ。まだそこまで行っておらぬか?」
……どういうこと?
モノが燃えるのは火の精霊が暴れるからでは無いの?
可燃性のものには火の精霊が隠れていて、それが燃えるための条件を整えたとき、暴れ出してモノを焼き尽くす。
それが錬金術で考えられている燃焼の仕組み。
私はそう習って来た。
だけどハスターはどうもそれとは違うと言ってるように思えた。
そう思ったとき
(この化け物……ただの化け物なの? 本当に?)
そんな思いが私の胸に湧き。
そのとき
「アスカさん!」
ディーヴァくんの声でハッとした。
私はハスターの言葉を考えこんでいた。
戦闘中なのに。
「ゴメン!」
私は羽ばたき、ならばとばかりに
「赤き炎よ! 我が大鎌を炎刃と化せ!」
私は手に持ったマーファシアの大鎌の刃に火炎を纏わせ炎刃に変える。
(これならどう……?)
その私の様子にハスターは
「ふふっ、その諦めぬ心は嫌いではないぞ! ではこちらも」
そう言い、その血管によく似た触手をこちらに向けて
「本気で殺らせてもらうとしようかぁ!」
叫ぶ。
同時に私は反射的に羽ばたき
その破壊的な「何か」を寸前で回避した。
それは私のすぐ傍を駆け抜けて
この大広間の壁に深く突き刺さった。
抉れる壁
(風の刃……?)
それは見えなかった。
でも確かに存在していて。
大広間の壁に突き刺さり、壁を抉ったんだ。
ハスターは愉し気に言う。
「……伊達に風の魔族という二つ名を名乗ってはおらぬでな。ボサッとしておったら身体が2つになると心得よ……神の鎧の継承者共!」
そう言いながらハスターは
複数の触手を掲げ、その上に何かの力場を発生させていた。
おそらく、同じ「風の刃」だ。
そして次の瞬間。
ハスターはその風の刃を
こちらに向けて一斉に投げ放って来た!




