第23話 マーファシアの大鎌
マーファシア皇后陵の中はあまり煌びやかではなかった。
丁寧に作られている印象はあったけど、装飾が無い。
基本的に人が入ることを想定していないからだろうか。
ただ、通路のところどころに壁画があった。
勉強に来たわけではないからゆっくり見ている時間は無かったけど
描かれていたのは……
山の頂上で男性が輝く人型の存在と向き合っているところ。
白い鎧の戦士が、4体の怪物と戦うところ。
そして剣を振り上げた男性が数多くの人々に崇められているところ。
多分だけど……
1枚目が神に初代皇帝が帝国を建国することを命じられるシーン。
2枚目が魔族と神の鎧の戦士の戦い。
3枚目が帝国が世界制覇を成し遂げて、帝国皇帝が正真正銘の地上の支配者になったところ。
なんじゃないかな。
わざわざ壁画にしているのは、帝国の歩みと神の鎧の戦士の戦いには密接な関係があることを、帝国中枢に記憶として残すためだろうか……?
ただ、その壁画を見て少しだけ思ったことは……
何故帝国建国の絵があるのに、神の鎧の戦士の誕生の絵が無いのか。
それだけだった。
本来なら4枚無いとおかしいんじゃないの……?
絵の並びもおかしい気がする。
おそらく神の鎧の戦士の戦いは建国前からあったんじゃないだろうか?
だから2枚目の方が先にくるべきじゃないの?
それともこれは帝国の立場の絵だから、先に建国の絵なのだろうか……?
だけどそんな疑問は
「うわ」
大広間に出たときに受けた衝撃で、吹き飛んだ。
そこは幅10メートルを超える大きな部屋で。
そこには身長6メートル近くの大きさの石の巨人がいたんだ。
私はその巨人を知っていた。
(あれは儀式魔法で作られる……守護者……ゴーレム)
ゴーレムとは、儀式魔法で創造される魔法生物で。
食事も睡眠も必要とせず、ただ与えられた役目を果たし続ける存在だ。
複雑な命令を与えられないので、戦争での兵器や一般護衛には向かないけど
まさに、こういう場所の番人にうってつけの存在だと思う。
石だからとても固く、魔法もほとんど受け付けない。
敵にはしたくない相手だ。
ゴーレムは私たちにその石の目を向けて来て、仁王立ちした姿勢から動き出そうとしたが
ディーヴァくんがあの青いペンダントを向けると、その場にゆっくりと跪いた。
多分このゴーレムは「青いペンダントを提示しない者以外は、無差別に攻撃しろ」みたいな命令を受けているんだと思う。
「行きましょう。もうすぐです」
ディーヴァくんが立ち止まっている私に気づいてそう促す。
私はこの状況で置いて行かれることに命の危険があることを自覚し、慌ててその後を追った。
でもさすがに……
この大広間の出口に行くためにゴーレムの傍を通り抜けるときは、さすがに緊張した。
ディーヴァくんが提示したペンダントの効果で通行許可が出ている状態だと理解はしていても。
そして。
「ここです」
私たちは最奥に到達する。
所謂玄室という場所だ。
そこには……副葬品……
土器で出来た人形、同じく土器で作られた道具や食べ物の形をした小物類の数々に囲まれた、石の棺がある。
そしてその棺の上に……
「あれが神器……?」
見た瞬間、私は思わずそう言っていた。
そこには大鎌が安置されていた。
誰かが取りに来ることを想定していたのかもしれない。
その大鎌は神聖さを感じさせる意匠が施されていた。
その柄をとても長い枝に見立て、花が咲き乱れているような意匠……
遥か昔のもののはずなのに、そこには一切の劣化が見られず
この大鎌が神器であることが一目で分かった
あれが……マーファシアの大鎌……!




