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鎧召喚令嬢~元皇太子妃、追放されながらも少年と共に魔族を討つ~  作者: XX
第3章 風の魔族と伝説の皇后

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第21話 伝説的皇后の話

「このままだと現在白骨病に感染している人間は全員死にますね」


 ニヤニヤ顔でそう言うナイアーラトテップに怒りが湧く。

 だが、その通りだ。


 現状治療法が無い。

 私たちはこれ以上の感染拡大を防いだだけで、今苦しんでいる人々を救えたわけではないのだ。


「……それで? そんなことはこっちも分かってますが?」


 そこでディーヴァくんが先にそう答える。

 そんな分かり切ったことをヒントだとでも?

 そう言いたげな様子で。


 その態度が愉しかったのか、ナイアーラトテップは笑みを深くして


「……伝説的皇后マーファシア……第12代皇帝の皇后だった人物。ご存知ですよね?」


 そんなことを。


 そんなことは当然


「知ってるに決まってるでしょ」


「当然知ってますよ」


 私たちは口を揃えた。

 伝説的皇后マーファシア。

 死後にその高い徳から聖女という贈名を得た皇后だ。


 難病に苦しむ民のために尽力し、神に祈り続けて。

 その手にしていた愛用武器の大鎌に、神の力を呼び込み神器にしたと伝えられている。


 その大鎌……マーファシアの大鎌は、全ての病を刈り取り、癒す力を持っていたとされる。


 ……そこで気づいた。


「まさか」


 ナイアーラトテップのヒント……

 それの意味することが。


「ああ、気づきました? そうです」


 私たちの表情で向こうも気づいたらしい。

 自分が口にした言葉で、私たちがどういう考えに至ったか。


 それは……


「マーファシアの墓を暴きなさい」




 そう言い残して。

 ナイアーラトテップはまた砂嵐を巻き起こして姿を消す。


 私たちは神殿の前に2人取り残される。



 マーファシアの大鎌は、マーファシアの崩御後にその墓……皇后陵に納められたらしい。


 聖女の持ち物を遺された者が奪い取るのは許されない、おそらくそう思われたのだと思う。

 それに仮にも神器だから、聖女以外の人間が振るうことが許されるのかと思われたのかもしれない。


 だからマーファシアの皇后陵を暴けば、おそらく大鎌は手に入る。


 でも……そんなことやっていいの?

 聖女だよ……?


 私の目標だった人物の墓……


 聖女の墓を……皇后陵を暴く。

 そんなことは許されない事だ。


「聖女マーファシア様のお墓を暴くなんて……」


 私はとてもそんな決断はできなかった。

 畏れ多い。

 無理だ。


 だけど


「……やりましょう。アスカさん」


 ディーヴァくんには迷いが無かった。

 その言葉に視線を向けると、ディーヴァくんの表情は……


 とても厳しい表情だった。


 私は


「……やるの? あの聖女マーファシアの皇后陵を……?」


 許されないでしょ、そう言おうと思った。


 でも


「その聖女が今の惨状を見て、なのに誰も神器を取りに来なかったらどう思うんでしょうね?」


 即座にハッキリと言い返され。

 私は何も言えなくなる。


 そうだ。

 確かに。


 疫病で苦しみ抜いて息絶えていく民のために、食を断ち眠らず、禊も拒否して祈り続けたと伝えられる人が


 自分への畏怖で神器を誰も取りに来ず、徒(いたずら)に民が命を落とすのを喜ぶとは思えない。


(だけどさ……!)


「それでも、確か神器が納められている聖女の皇后陵は皇家による魔法的封印が」


 通常皇帝や皇后の墳墓には封印が無い。

 理由は「民に墓を暴かれるような歪んだ治世をしなければいい」という皇家の精神のためだ。


 一応、警備兵は置かれているが本気では守ってない。

 あくまでも念のため。


 だけど、マーファシア皇后陵だけは違う。


 納められている神器が貴重過ぎるのでさすがにあるんだ。

 儀式魔法による封印が。


 それに言い伝えでは、内部に儀式魔法で用意された侵入者を排除する強力な番人もいるらしい。

 

 だけど


「そこも問題ありません」


 ディーヴァくんは全く問題視しなかった。

 何か手段があるのかもしれない。


 ……私はこの少年をすでに信頼していた。

 彼は根拠なくこんなことは言わないし。


 だいたい、いつも大きな目で見れば正しいことを言ってるし、やっている。


 だから


「行きましょう」


 彼のその言葉に。


 私は……頷くしかないと思った。

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