↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎧召喚令嬢~元皇太子妃、追放されながらも少年と共に魔族を討つ~  作者: XX
第3章 風の魔族と伝説の皇后

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/28

第19話 VSワンプ

「さ、サミー巫女頭が!?」


「バケモノオオオオオ!!」


 悲鳴と混乱が巻き起こる中。

 私たちはそいつと対峙していた。


 伝承で言葉でだけは知っていたけど。

 本物のワンプは本当に悍ましかった。


 大きさは3メートルを超える。

 全体的な色は、白。


 胴体部分は本当に子豚くらいしかない。

 伝承通りの目が存在しない子豚の顔。

 ただし、豚なのに肉食獣そっくりの牙が生えていて。

 耳が蝙蝠のように大きく、尖っている。


 そしてその小型の胴体に異様に長い脚が生えている。

 形状は蜘蛛とよく似てるけど……先端部分にヤモリのような指が生えていて。

 その足裏の部分だけが赤かった。


 数は9本。

 左右対称にできない。

 なので開き直ったように、何とか体のバランスを取れるだけで、生え方が歪だった。


 歪んだ怪物……そういう表現がしっくりくると思う。


「……よくも……よくも見破ってくれたわね……! さてはこの国の闇の戦士か……!?」


 そのとき。

 ワンプの口ががぱりと開き、その舌に人間の顔が浮かび上がった。

 やたら粘性の高い悍ましい唾液に塗れたその舌に浮かび上がる顔……それはサミー巫女頭の顔だ。


 私はそれには答えず


 油断なくその動きを注視しながら


「……街の人間を襲ったのは? やはり懺悔を聞き過ぎたせい?」


 一応、討伐前の最後の確認のつもりでそう訊ねる。

 ワンプ=サミー巫女頭は


「ハッ、あれの何が懺悔なものですか!」


 吐き捨てるようにそう言った。


「私は神は全ての罪を赦し、人間がただ心穏やかに正しく生きることを望んでいると信じていたし、言っていた!」


 確かにこの帝国の宗教は「神は全ての罪を赦す」とは言っている。

 だがそれは――


「だが、この街に住んでいるゴミどもは愚か過ぎてそれを曲解したのだ!」


 そうそれは別に――


「懺悔すれば全ての罪が許されると考えていた! どんな悍ましい罪もだ!」


 何をやっても神は赦して下さる、という意味じゃない。

 神はどんな罪人も赦し、その愛を注ぎ続けて下さるという、それだけの意味だ。

 言うなれば、親の愛は永遠だと言うようなもの。


 人の世には許されない罪がある。

 償わなければならない罪がある。


「人形遊びの延長で他人の赤子を殺した女がいた! 就寝中の女性を凌辱した奴が居た! 養子にした娘に歪んだ教育を施して愛人にしていた男もいたッ!」


 サミー巫女頭の顔は目を血走らせながら、己の仕事で聞いた罪の告白について吐き出し続けた。

 確かにそれはとても悍ましいものだった。


 他人を意図せず深く傷つけてしまった、どころの話じゃない。

 どれも発覚すれば確実に処罰される明らかな犯罪だった。


「そんな罪は許されないッ! 私は正しく罪を償えと勧めたが奴らが言ったことはッ!」


 サミー巫女頭の顔は嗤っていた。

 怒りながら嗤っていた。


「神は全ての罪を赦して下さるはずだろう? だッ!」


 私はその笑みに、サミー巫女頭の絶望を見た。

 彼女は懺悔を聞き過ぎて、人間そのものに絶望したのかもしれない。


「もう殺すしかない! 皆殺すしかない! ブチ殺すしかない!」


 どいつもこいつも懺悔に来ないだけで、死すべき罪人である。

 そう思うに至ったのか。


 ……私はそこで、大鎌を構えた。

 ディーヴァくんも長剣を抜く。


 それを私たちの戦う意志と見て取ったか

 サミー巫女頭=ワンプは


「死ねッ! 腐り果ててくたばるのがお似合いだゴミ共めっ!」


 最後に大きくそう吼えて


「皆殺しにしてやるッ!」


 舌の顔を消し


 ぴぎいいいいいいい!


 耳障りな鳴き声と共に私たちに躍りかかって来た。


 だけど私たちは


 ふたり、自分の頭上、周囲に己の武器で円を描き



「着装!」



 同時だった。


 瞬時に神の鎧を召喚し。

 全身着装を終え。


 ワンプがその事実に驚愕する暇もない一瞬で


 私が大鎌でワンプの胴体を両断し、ディーヴァくんがその長剣でワンプの首を切断した。


 そしてその首がボトンと神殿の石の床に落ち、切り裂かれた胴体がどうと倒れ伏すよりも早く。


 私たちは神の鎧の着装を解除する。


 ……目撃者が多いから、やむを得ないけど。

 ホンの一瞬だから私たちの正体に思い当たる人が少ないことを願いたい。


 私は床に転がっているワンプの首を見つめた。


(……心が闇に染まらなければ、真面目な立派な人物だったんだろうな)


 私はそう、転がっている怪物の生首を見つめながらそう思い

 その後周囲を見回し


「……ワンプは倒しました。これ以上はもう白骨病は広がらないはずです」


 人々にそう事実を伝える。


 とはいえ。

 すでに広がった病をどうにかしないと、ここにいる患者たちにはいずれ逃れられない死が待っている……!


 そう思ったときだった。


「アスカさん危ない!」


 ディーヴァくんの鋭い声が飛んだ。


 えっ、と思ったとき


 私はディーヴァくんに引き摺り倒された。

 私を押し倒したディーヴァくんの表情は強張っていて


 その視線は私じゃ無くて、別の場所


「殺す! 殺す! 殺すゥゥ!」


 ……ワンプの生首……に注がれていた。

 ワンプの生首は人の首に戻っていなかった。


 ガグは死ぬと人に戻ったというのに……!


(あれで死んでなかったんだ……!)


 気づくべきだった。

 人に戻らず怪物のままであることに。


 ワンプの生首は変化していた。額の部分にサミー巫女頭の顔。

 そして頭の両サイドに、蜘蛛のような脚を複数本新しく生やしていたのだ。

 それでジャンプして、私に噛み付こうとしたのかもしれない。


(どうやら、再生能力があるみたい……!)


 その異形ぶりに戦慄しながら


 私は冷静に術式を頭の中で組み上げていた。


 そして私はディーヴァくんに押し倒された姿勢のまま


「焼き払う火炎よ!」


 サミー巫女頭の成れの果てが再び襲ってくる前に。

 向けた右手から火炎を放射し。


「ぎいいいいやああああああああ!」


 私はそれを焼き払い、今度こそ眷属ワンプを倒した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想をいただけましたら必ず返信致します。
些細な感想でも頂けましたら嬉しいです。
ブクマ、評価、いいね等、いただけましたら感謝致します。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。