第12話 VSガグ
眷属『ガグ』
その姿を見て思う
(どうやって喋っているの?)
ガグは口の構造上、複雑な発音が出来そうに見えない。
唇が無い。
舌はあるけど、長過ぎて発音に使えなさそうに思えた。
なのにガグは
「さあ、掛かってこい! 一人残らず殺し尽くしてくれる!」
流暢に喋っている。
何故?
その疑問を持ったとき。
私は気づいた。
……ガグの胸に人の顔があった。
その顔が喋っている。
(ひょっとしたらあの顔が弱点なのかもしれない)
だがそんな伝承は見た覚えがない。
ひょっとしたら見当違いかも……
私は戦闘中にも関わらず、初めて「魔族の眷属」というものを目にし、分析を行っていた。
そのせいで
「アスラさん!」
ディーヴァくんの声でハッとする。
ギリギリ、ガグが私に目標を定めたことに気づく。
「ウオオオオ! まずは女ァ! お前からだ!」
私は咄嗟に鎧の召喚をしようと考えたが
周囲にはまだ人が居る。
(ここは人目が)
そこに気づき
(鎧の召喚は駄目だ)
そう結論付けて、突進してくるガグの一撃を、サイドに回り込む足運びで回避。
躱しざまにその背中に大鎌の一撃を叩き込もうとした。
しかし
ガグはまるで後ろに目がついているように、その一撃を回避。
前に飛び込むとか、大きく踏み込むではない。
本当に見えているように身体を動かしたんだ。
それに関してもすぐ謎が解けた。
ガグの目はかなり横の位置についている。
後ろが視界に入っている。
それはまるで……
馬の視界を思わせた。
(そういうことか)
コイツは人では無い。
魔族の眷属なんだ。
後ろを取ったから勝てる、じゃないんだ。
「クハハハハ! ガグの能力を舐めるなァ! ガグには死角が無い! 残念だったな!」
勝ち誇ったガグの変身者の声。
続けて。
振り向かず、ガグの鉤爪が私を狙って振り下ろされる。
肩関節の可動範囲も規格外のようだ。
私はバックステップでそれを避け、空振りした爪の一撃が地面を穿つのを見る。
その威力、貰えば並みの鎧は役に立たない。
一巻の終わりだろう。
(死角のない視界に、恐ろしいまでの攻撃力……とんでもない相手)
私がそう、ガグの戦闘力を分析していると
「炎よ!」
「電撃よ!」
別の方向から火球や電撃の魔法がガグを撃った。
「グオッ!」
ガグは火球に関しては腕でガードしたが、電撃については直撃を受ける。
弾速の問題だろうか。
だがその一撃はガグを倒すに至らず
「やかましいぞ!」
受けたダメージに対して怒りを示し
「先に殺してやるわ!」
その方向に向き直り、跳躍
しようとしたとき。
「ナァッ!?」
ガグの足元が急速に凍っていく。
瞬く間に、ガグの下半身……およそ2メートルくらいの範囲を。
(ディーヴァくんだ……)
こんな見事な氷の精霊魔法の使い手、そうそういるわけがない。
視線を向けるとディーヴァくんは鋭い視線を向けたまま
「アスラさん! 火炎魔法を!」
そう私に指示を飛ばした。
それを聞き、思う。
(火炎魔法……?)
火炎魔法を今のガグにぶつければ、多少はダメージがあるかもしれないが
氷の魔法も溶けてしまうだろう。
それぐらい、ディーヴァくんだって分かっているはず。
それでもそれを言ってくる理由は……
(あっ!)
気づいた。
私は頷き、急ピッチで頭の中で術式をくみ上げ、左手の掌を向け
そして
「爆ぜる火炎よ!」
私の手加減抜きの火炎球の魔法が撃ち出され
「ギャアアアアアアア!」
それは氷の魔法で動けないガグに着弾し、爆裂。
火炎の柱のように燃え上がり、ガグをすっぽり飲み込んだ。
ガグにダメージがあったようだ。
だがそれは、決定打ではない。
ガグは苦し気に悶えているが、それだけ。
倒せる気配はなかった。
……そう。
本命は別なのだ。
その場には霧が立ち込めていた。
それはディーヴァくんの氷の魔法による水蒸気。
ディーヴァくんの魔法でガグを凍り付かせていた氷が融け、水蒸気になり。
この場に霧となって立ち込めたのだ。
私とディーヴァくんだからこそできたこと。
同じレベルの、炎と氷、正反対の精霊魔法だから出来たこと……
私たちは霧に紛れるようにガグに向かって突き進み、走りながらそれぞれの武器で大きな円を描いた。
そして鋭く口にする
「着装!」
――神の鎧を呼び出す力の言葉を。




