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鎧召喚令嬢~元皇太子妃、追放されながらも少年と共に魔族を討つ~  作者: XX
第2章 出現する魔族たち

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第11話 眷属襲来

「魔族の眷属だと!?」


 隊長の顔色が驚愕から一瞬で青くなり、そして責任と覚悟を伴ったものに変わる。


「……数はいくらだ?」


 隊長の問いに、伝令兵が


「200以上あるのではとの見立てです。蛮族の数が確実にそれ以上ですので」


「そうか……」


 隊長は苦い顔だ。

 まあ、それはそうだろう。


 伝承では、眷属の強さは「絶対に雑魚ではない」という言い伝えだ。

 雑兵であっても低級の魔物であるゴブリンやコボルトとは違うんだ。


 そんな存在が200以上攻め寄せ、それが街を襲っている……


 楽観視なんてできるはずがない。


 隊長は私たち兵士に向けて

 強い視線を向けて


「辺境防衛隊諸君……出撃せよ!」


 出撃命令を出した。




 朝の食事も無しに、私たちは街を守るために砦から出撃した。

 私はそこに少しだけ引っ掛かったが、しょうがない。


 食べている時間など無いわけだ。


(願わくば、戦死者が少なくありますように……)


 眷属と化した蛮族が暴れているという市街地に飛び出しつつ。

 私はそう心で念じた。




「ゲハハハハハ! 奪え! ここにあるものは全て俺たちが得るはずだったもんだぁ!」


 戦場となっている市街地に飛び出すと。


 粗野な笑い声が聞こえて来た。


 市街地には奇妙な怪物が溢れかえっていた。


 それは鼻がない人型の顔面を持っていて。

 灰色の皮膚は乾ききっていてひび割れていて。

 後ろ足が長く蹄があり、跳び跳ねて移動する。

 そんな人間大の人型クリーチャー。


(確かあれはガスト)


 魔族の眷属の伝承に確かそんなものがあった。

 魔族の眷属としては雑兵にあたるけど、実力は雑兵じゃない。


 最低でもオーガに近い実力を持っている。


 数人の兵士がまとまって向かって行ったけど、1人がガストの裏拳で吹っ飛ばされていた。


 バカ力なんだ。


 そんなのが山のようにいる。


 それぞれがモノを奪ったり、兵士や通行人を襲ったりして街を破壊している。


 そしてそんな略奪と暴力の渦の中、ひとり高笑いしている毛皮の服を着た男が居た。

 姿形からして、間違いなく蛮族だ。


「出ていきなさい! ここはあなたたちの場所ではない!」


「好き勝手やるのはそこまでだ蛮族!」


 そう声高く宣言しながらその蛮族の男の前に飛び出す。


 すると男は視線を向けながら


「……何が蛮族だ。傲慢な帝国め」


 憎々し気にそう言ってくる。


「何が傲慢なの!? 帝国の法に従わず、野山に隠れ住んで略奪を繰り返す化外(けがい)の民が何を言ってるの!?」


 あまりにも勝手な言い分。


 この地で蛮族と呼ばれる彼らは、帝国の民になることを拒否し、野山に潜んで旅人を襲う身勝手な野蛮人だ。

 だから取り締まられているのに、彼らはそれを逆恨みし帝国を憎悪している。


 だが


「何が化外の民だァ!? 自分達の王を自分達の王にすることの何が悪い!?」


 私の言葉はこの男には届かなかった。

 いや……


「それを貴様ら帝国は自分たちの皇帝こそ唯一の地上の王であると認めないのであれば、お前たちはここに住む資格が無いと追い出した! これが傲慢で無くて何だ!?」


 ……逆鱗に触れたらしい。


 私はその男の気迫に息を呑む。


(この男は自分の正統性に僅かな疑念も持っていない……)


 そこに気づくと同時に


(彼の言い分は、全くの戯言なのだろうか……?)


 そう、思ってしまったのだ。


 帝国の版図拡大の歴史は、周辺国の王に真の王は帝国の皇帝であると認めさせ、その見返りに帝国の暦と農業技術、家畜生産技術のような「生き残る力」を分け与える。

 その連続だった。


 私はそれに別に疑問は持っていなかった。

 だけど……


(この人たちは自分たちの王は自分たちの中で決めるという気持ちを捨てたく無かったんだ)


 そこに気づき。

 私は言葉に詰まった。


 私の理性は


 それでも王は統一されねばならない。王が1つでないと同じ法を敷くことができないじゃないか。


 そう言っていたけれど。

 言えなかった。


 そのとき


「……帝国の版図拡大は確定事項。平和のためです。そして帝国に加わってもあなた達の王はあなた達の主君である事実は変わらないはずですが?」


 私は目を向ける。


 ディーヴァくんが


「それを蹴って盗賊に成り下がったのはあなた達です。僕たちに憎しみを向けるのはやめてください」


 私の隣で、流れるように堂々と

 帝国側……私たちの側の言葉を言い放った。


 その瞬間、男は激昂し


「ぬかしたなクソガキがあああああああ!!」


 毛皮の服を着た蛮族の男は右手を翳した。

 その手のひらの中には何か、紋章のようなものが刻まれていて


 それが輝いたとき


 蛮族の男の姿が変わった。



 輪郭がぼやけ、拡大し。


 一瞬で怪物の姿に変わる。


 それは毛むくじゃらの4本腕の巨人。


 身長は約6メートル。

 全身が黒い剛毛に覆われていて。

 肩から生えた2本の腕が、肘の部分でさらに二股に分かれていて、計4本。

 4本の腕に備わった手指には鋭い鉤爪がある。

 その巨人はそのように体躯が異常な構造だったが、最も異様なのが顔面で。


 口が横にではなく縦に裂けていた。

 まるでハエトリグサのような構造で、縦に裂けた口。

 その口には黄色い牙が無数に生えていて……


 頭の左右にピンク色の目があり、それが前後左右をギョロギョロと見回していた。


 その恐ろしい姿に、私たちは息を呑む。


 私たちの目の前でその異形の怪物に変じた蛮族の男は、変身完了の意味も込めてか、激しい怒りの言葉をその縦に裂けた口から吐き出した。


「この眷属『ガグ』の力で思い知らせてやる! 死に絶えろ帝国のブタどもがぁぁぁ!!」

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