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7話ー⑨ 宿敵、再び

北方戦線。

聖族軍と魔族軍が激突する戦場の中央。

ジセンニティは、魔族兵を率いながら戦線を支えていた。

レヴァンテ配下の将。

知勇兼備の堅将。

敵の動きを見極め、兵を適切に動かしながら、自らも最前線に立つ。

『右翼、あと一歩下がれ! 敵を引き込みすぎるな!』

『はっ!!』

『左翼はそのまま押せ! 敵の隊列が崩れ始めている!』

的確な指示が飛ぶ。

兵たちは迷うことなく従う。

その姿を見れば、ジセンニティが単なる武人ではないことは誰の目にも明らかだった。

戦況を見る目。

兵を動かす判断力。

そして――。

自ら前線に立つだけの武勇。

そのすべてを兼ね備えた男だった。

しかし。

そんなジセンニティの前へ――。

一人の巨漢が歩み出る。

『……』

ジセンニティが顔を上げる。

遠くからでも分かる。

あの巨体。

あの大剣。

そして、あの威圧感。

ジセンニティの目が細くなる。

『……まさか』

巨漢もまた、ジセンニティを見つめていた。

聖騎士。

ラスゴーグ。

以前の北方戦線で、二人は一度だけ刃を交えている。

激しい一騎打ちだった。

力で押し切ろうとするラスゴーグ。

それを真正面から受け止め、隙を突こうとするジセンニティ。

互いに譲らぬ戦いの末――。

決着はつかなかった。

だが。

あの戦いによって、二人は互いの力量を認めた。

敵でありながら――。

強者として。

戦士として。

そして、いつか決着をつけるべき相手として。

ラスゴーグが大剣を肩に担ぐ。

『……ようやく見つけたぞ』

ジセンニティは静かに剣を構えた。

『ラスゴーグ……』

『覚えているだろう?』

『忘れるものか』

ジセンニティの口元に、僅かな笑みが浮かぶ。

『あの時は、決着がつかなかった』

『ああ』

ラスゴーグが笑う。

『ずっと気になっていた』

大剣をゆっくりと構える。

『次に会った時こそ、貴様を倒すとな』

ジセンニティの瞳に鋭い光が宿る。

『奇遇だな』

一歩。

踏み込む。

『私も同じことを考えていた』

次の瞬間――。

ラスゴーグが地面を蹴った。

『おおおおおおお!!』

ズドォォォン!!

凄まじい勢いで突っ込んでくる。

ジセンニティは動かない。

そして――。

『――そこだ』

ガキィィィィン!!

大剣と剣が激突した。

凄まじい衝撃。

周囲の砂埃が一瞬で吹き飛ぶ。

ラスゴーグが力を込める。

『どうしたぁぁぁ!!』

ギギギギギ……!!

大剣がジセンニティを押し込んでいく。

だが。

ジセンニティは退かない。

剣の柄と先を両手で支え、真正面から受け止める。

『……相変わらず、凄まじい膂力だ』

『ならば、受け続けてみろ!!』

ラスゴーグがさらに力を込める。

ドォン!!

ジセンニティの足元が沈む。

しかし――。

その瞬間。

ジセンニティが剣を僅かにずらした。

ラスゴーグの力が空を切る。

『なに!?』

『力任せではな――』

ジセンニティが身体を捻る。

『私には届かん!!』

ドォッ!!

剣が横薙ぎに払いラスゴーグの脇腹を打ち抜く。

『ぐおっ!!』

ラスゴーグが数歩後退する。

だが、倒れない。

むしろ――。

『……ははっ!!』

笑っていた。

『そうだ……それだ!!』

大剣を握り直す。

『貴様はそういう男だった!!』

ジセンニティも構えを戻す。

『貴様も変わらんな』

『何だと?』

『力で押し切るように見えて――』

ジセンニティの視線が鋭くなる。

『相手の隙を狙う判断力は、以前よりも増している』

ラスゴーグがニヤリと笑う。

『よく見てやがる』

『前回、貴様と戦って分かったことだ』

再び二人が踏み込む。

『ならば――』

『今度こそ――』

ガギィィィィン!!

再び武器がぶつかる。

一撃。

二撃。

三撃。

ラスゴーグの大剣が唸る。

ジセンニティの剣がそれを受け流す。

斬撃を受け。

避け。

弾き。

そして反撃する。

ギィン!!

ドガァン!!

ガキィン!!

激しい攻防が続く。

ラスゴーグは圧倒的な膂力で押し切ろうとする。

対するジセンニティは、相手の力を利用しながら攻撃の軌道を逸らし、確実に反撃を叩き込む。

まさに――。

剛と堅。

力と技。

猛攻と守勢。

相反する二つの戦い方が、真正面からぶつかっていた。

『おおおおおお!!』

『はぁぁぁぁぁ!!』

ドガァァァァン!!

互いの一撃が同時に弾ける。

二人が距離を取る。

傷を負い。

息を荒げ。

それでも――。

視線だけは逸らさない。

ラスゴーグが笑う。

『やはり、貴様は最高だ』

ジセンニティも静かに答える。

『私も同じだ、ラスゴーグ』

『なら――』

ラスゴーグが大剣を構える。

『次で決めるぞ!!』

ジセンニティも槍を構え直す。

『望むところだ』

二人が同時に駆け出す。

『うおおおおおおお!!』

『はぁぁぁぁぁぁ!!』

ガァァァァァン!!

再び激突。

二人の武器が鍔迫り合いとなる。

力を込めるラスゴーグ。

それを受け止めるジセンニティ。

互いの顔が近づく。

ラスゴーグが叫ぶ。

『ジセンニティ!!』

『ラスゴーグ!!』

『今度こそ――!!』

『決着を――!!』

ギギギギギギ……!!

二人の武器が激しく軋む。

その瞬間。

戦場に新たな轟音が響き渡った。

二人は同時に顔を上げる。

周囲では、聖族軍と魔族軍の戦いがさらに激しさを増している。

ラスゴーグがニヤリと笑った。

『……まだ終われねぇな』

ジセンニティも頷く。

『ああ』

二人は同時に武器を引く。

『決着は――』

『また次だ』

そして二人は、それぞれの戦場へと戻っていく。

宿敵。

好敵手。

敵でありながら、互いの強さを誰よりも認める二人。

北方戦線で幾度となく激突する二人の戦いは――。

まだ、終わらない。

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