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幕間 3人の側近

都市の城門が、ゆっくりと開かれていく。

馬車が門をくぐると、そこには普段とは明らかに違う光景が広がっていた。

通りを歩く人々の数は少なく、兵士たちは警戒を強めている。

建物の一部には戦闘の跡も残っていた。

ヴァンテージは馬車の窓から街の様子を眺める。

『……思ったより被害が出ていますね。』

ヴィラージュも静かに頷く。

『襲撃そのものは小規模でも、市民には十分な恐怖だったでしょうね。』

ラピートは腕を組み、険しい表情で街を見渡した。

『こんな可愛い街を襲うなんて、いい度胸してるじゃない。』

『まずは領主のもとへ向かいましょう。』

『そうねぇ。』

馬車はそのまま都市の中心部へ進んでいった。

やがて大きな屋敷へ到着する。

三人が馬車から降りると、屋敷の前で一人の男が待っていた。

この都市を治める領主である。

領主は三人を見るなり、深々と頭を下げた。

『魔皇様の側近の皆様……! 遠路はるばる、ありがとうございます!』

ヴァンテージも軽く頭を下げる。

『頭を上げてください。』

『我々は魔皇様の命を受け、今回の襲撃事件を解決するために参りました。』

『はい! どうか、この都市をお救いください!』

領主の声には切実なものがあった。

ヴィラージュが静かに尋ねる。

『まず確認します。襲撃した聖族の人数は?』

『確認できているだけで十数名ほどです。』

『正確な人数は分かっていないのですね。』

『申し訳ありません……。』

『謝る必要はありません。』

ヴィラージュは穏やかに微笑んだ。

『潜伏している可能性があります。』

ヴァンテージが続ける。

『襲撃後、怪しい動きをした者や、普段は人が寄り付かない場所について教えてください。』

領主は少し考えた。

『……一つ、心当たりがあります。』

『西側の旧倉庫街です。』

『現在はほとんど使われておらず、人の出入りも少ない場所です。』

ラピートが口を挟む。

『あらぁ。ずいぶん怪しいじゃない。』

『ですが、確証はありません。』

『なら、確かめればいいだけよぉ♪』

ラピートは拳を握る。

『見つけたら、アタシがまとめて――』

『ラピートさん。』

ヴァンテージが冷静に制した。

『まず情報収集です。』

『はいはい。分かってるわよぉ。』

ヴィラージュが領主へ尋ねる。

『旧倉庫街周辺を警備している兵はいますか?』

『数名おります。』

『では、その兵士たちからも話を聞きましょう。』

三人はすぐに旧倉庫街へ向かった。

――しばらくして。

古びた倉庫が並ぶ一角。

ヴィラージュが周囲を見渡す。

『……人の気配があります。』

『どこです?』

ヴァンテージが尋ねる。

ヴィラージュは一つの倉庫を指差した。

『あちらです。』

ラピートが目を細める。

『……いるわねぇ。』

『確定ですか?』

『アタシの勘よ♪』

『勘ですか……。』

その瞬間。

倉庫の奥から、微かな物音が聞こえた。

三人は顔を見合わせる。

『……どうやら、正解みたいですね。』

ヴァンテージが静かに息を吐く。

『包囲します。』

三人は素早く散開した。

倉庫の出入口を塞ぐ。

『中にいる者へ告げます。』

ヴァンテージの声が響く。

『聖族の襲撃部隊ですね?』

返事はない。

代わりに――。

ガシャッ!!

倉庫の奥から武器を構える音が響いた。

『……話し合う気はないみたいねぇ。』

ラピートが肩を回す。

『じゃあ――』

『行きましょうか♪』

次の瞬間。

倉庫の扉が吹き飛んだ。

聖族兵が一斉に飛び出してくる。

『敵襲だ!!』

『魔族だ!!』

しかし。

その動きを、三人は完全に見切っていた。

ヴァンテージが指示を飛ばす。

『正面をお願いします、ラピート!』

『任せなさぁい♪』

ラピートが一歩前へ出る。

『はい、そこまでよぉ!』

振り下ろされた剣を片手で受け止める。

ギィンッ!!

『なっ――!?』

ラピートはそのまま剣を押し返した。

『そんな細い腕じゃ、アタシには届かないわよぉ♪』

ドゴンッ!!

拳が兵士の腹へ叩き込まれ、兵士が地面を転がる。

その横ではヴィラージュが静かに歩みを進めていた。

『動かないでくださいね。』

妖艶な微笑み。

その瞳を見た聖族兵の動きが止まる。

『……あ……。』

『もう、戦う必要はありません。』

次々と兵士たちの動きが鈍っていく。

その隙を逃さず、ヴァンテージが指示を出す。

『今です!』

魔族兵たちが一斉に突入する。

数分後。

戦闘は終わった。

倒れた聖族兵たちは拘束され、倉庫内の制圧も完了する。

ヴァンテージは周囲を確認する。

『……討伐完了です。』

ヴィラージュが小さく頷く。

『思ったより早く終わりましたね。』

ラピートは服についた埃を払いながら、肩をすくめる。

『あらぁ。もっと歯応えがあると思ってたのに。』

『今回は小規模な襲撃部隊でしたからね。』

ヴァンテージが答える。

『それにしても、あっけなかったですね。』

ヴィラージュが微笑む。

『三人で来た意味があったのかと思ってしまうくらいです。』

『何言ってるのよぉ。』

ラピートが笑う。

『アタシたち三人が来たから、あっけなく終わったんじゃなぁい?』

ヴァンテージとヴィラージュが顔を見合わせる。

『……確かに。』

『ふふっ。そうかもしれませんね。』

ラピートは満足そうに胸を張った。

『でしょう?』

三人は笑いながら、都市の中心部へ戻っていく。

戦場では今も、魔族と聖族の戦いが続いている。

だがこの日。

この小さな都市では――

魔皇ヴァンキッシュの側近たちによって、静かに戦火の芽が摘み取られたのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。もし「続きが気になる」「おもしろい」と思ってくださったら、ページ下部の【ブックマークに追加】や、評価の値【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、毎日の執筆と更新の大きな励みになります!次回は、明日【21:00】に更新します。

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