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4話ー⑧ 円卓の干支

獣族国――中央議事堂。


重厚な石造りの大広間。


その中央には、一つの巨大な円卓が置かれていた。


円卓を囲むように十二の席が並び、それぞれに異なる獣人が静かに腰を掛けている。


獣族首脳部。


通称――「干支」。


子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥。


建国の時代より獣族を支え続けてきた十二種族の代表者たちであり、獣族王国最高意思決定機関である。


その場には重苦しい空気が流れていた。


やがて、一人が静かに口を開く。


『……象人のカシマシが敗れたそうだな。』


その言葉に、円卓の空気がさらに重くなる。


丑人族の代表が深く頷いた。


『然り。』


『あれほどの猛者が敗れようとは、未だ信じ難い。』


寅人族の代表が腕を組む。


『しかし、魔族も橋頭堡を築いた後、それ以上は踏み込んではおらぬ。』


『深追いを避けた……か。』


辰人族の代表が静かに地図へ視線を落とす。


『森へ誘い込めば話は変わる。』


『森が深くなればなるほど、そこは我らの庭。』


『地の利は我らにある。』


申人族の代表が小さく笑う。


『今回はこちらも痛手であった。』


『だが、それ以上に魔族の力の一端を知ることができた。』


『八冥王……。』


『まさしく化け物ぞ。』


部屋のあちこちから静かな同意が漏れる。


『世界を敵に回してなお、よく持ち堪えておるものだ。』


『魔族は強大ですな。』


亥人族の代表が腕を組み直した。


『だが、忘れてはならぬ。』


『聖族もまた、まだ本気ではあるまい。』


戌人族の代表が頷く。


『その通り。』


『聖族国家連合は上位七カ国を中心に戦っているに過ぎぬ。』


『その他の国々は、まだ本格的には兵を動かしておらぬからな。』


『戦は始まったばかりということか……。』


誰かが小さく呟く。


円卓に再び静寂が訪れた。


やがて、年長と思しき代表者がゆっくりと口を開く。


『我らも、カシマシ一人を失っただけで力尽きたわけではない。』


『干支の名は伊達ではない。』


『焦る必要はあるまい。』


全員が静かに耳を傾ける。


『魔族は橋頭堡を築いた。』


『ならば我らは、その橋頭堡へ絶えず圧力を掛け続ける。』


『補給を断ち、疲弊させ、隙を待つ。』


『森を味方につければ、勝機は必ず訪れる。』


十二人の視線が交わる。


『然り。』


『足並みを乱してはならぬ。』


『八冥王を相手取るならば、なおさらだ。』


『では、今後の方針を確認する。』


議長役の代表が円卓を見渡した。


『各戦線は現状維持。』


『橋頭堡への圧力を継続し、好機を待つ。』


『これに異論はあるか。』


誰一人として口を開く者はいない。


やがて、一人が頷く。


『異議なし。』


続いて、


『異議なし。』


『異議なし。』


賛同の声が次々と重なり、やがて円卓は満場一致で一つの結論へと至った。


こうして獣族王国は、新たな方針を定める。


西方戦線は、一時の敗北によって終わることはない。


互いに力を蓄え、次なる激突の時を待つ。


そして世界の視線は、静かに東へと向かい始めていた。


そこでは未だ大規模な戦闘は起きていない。


妖族は軍を動かすべきか、それとも静観を貫くべきか。


その決断一つが、世界の勢力図を大きく変えることになるとは、この時まだ誰も知る由はなかった。

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