幕間――参謀の矜持
魔皇城バルルモラ。
参謀ヴォランテの私室。
机には北方戦線、西方戦線、東方方面、そして賢族・妖族に関する報告書が山のように積まれていた。
ヴォランテは椅子へ深く身を預け、静かに目を閉じる。
『……課題は三つ。』
『北方戦線の膠着。』
『妖族への工作。』
『そして――魔皇様の理想。』
小さく息を吐く。
『魔皇様は、力だけで世界を治めようとは考えておられない。』
『戦うべき戦は戦う。だが、戦わずして従う者がいるなら、その方が犠牲は少ない。』
『だからこそ、私の役目がある。』
ゆっくりと身体を起こし、机へ向き直る。
『八冥王は、それぞれの戦場で使命を果たしている。』
『ならば私は、影から魔皇様の覇道を支える。』
『決して失態は許されない。』
彼は妖族方面の報告書を一枚手に取る。
『……やはり妖族か。』
『幹部の一部はこちらへ傾いている。』
『これを増やす。』
『停戦で終わるのも悪くない。』
『だが理想は――妖族そのものをこちらへ引き入れることだ。』
指先で机を軽く叩く。
『武ではなく、言葉で勝つ。』
『それが出来れば、魔皇様の負担も一つ減る。』
静かに鈴を鳴らす。
数秒後、部下が部屋へ入ってきた。
『お呼びでしょうか。』
『間諜を増やします。』
『妖族に潜入できる者を選びなさい。』
『交渉役。商人。旅人。何でも構いません。』
『目的は情報収集と、幹部への接触です。』
『承知しました。』
部下が退出すると、ヴォランテは窓の外を見つめる。
『戦とは、剣だけで決まるものではない。』
『一人の将を味方につけるだけで、一万の兵を動かすこともできる。』
そして最後に、小さく微笑む。
『どうか、ご期待ください。魔皇様。』
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