表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/19

3話ー⑧ 手のひらの上で踊る

静寂に包まれた魔王城バルルモラ。

玉座の間には、魔皇ヴァンキッシュと、その傍らに控える参謀ヴォランテだけがいた。

重苦しい空気の中、ヴォランテが一歩前へ進み、静かに頭を下げる。

『魔皇様。各戦線より報告が届いております。』

玉座へ深く腰掛けたヴァンキッシュは、肘を掛けたまま静かに答えた。

『申せ。』

『北方戦線は現在膠着状態です。』

『レヴァンテ魔将を総大将とし、第六席ヴェゼル、第七席コアードが合流。聖族国家連合との戦いは互角を保っております。』

ヴァンキッシュは目を閉じたまま小さく頷く。

『予定通りだ。』

『はい。敵は兵数で勝り、我らは兵の質で勝る。容易には均衡は崩れません。』

『ヴェゼルは。』

『見事に役目を果たしております。法術により敵へ大きな損害を与え、戦場そのものを書き換えました。』

『コアードは未だ本領を発揮しておりません。敵の主力へぶつける機を待っております。』

『焦る必要はない。』

ヴァンキッシュは静かに言葉を落とす。

『切り札とは、使うためにあるのではない。』

『勝つために使うものだ。』

『御意。』

ヴォランテは再び頭を下げた。

『西方戦線も予定どおり進行しております。センチュリー様、ヴィルフェイエ様が軍を率い、獣族を牽制しております。』

『東方方面は。』

ヴァンキッシュの問いに、ヴォランテはわずかに表情を引き締めた。

『妖族は依然として危険な動きを見せております。』

『しかし、大規模な軍事行動には至っておりません。』

『……例の件は。』

ヴォランテは小さく笑みを浮かべる。

『順調に進んでおります。』

『現在も我が密使が妖族幹部との接触を続けております。』

『表立って動くことはできませんが、少しずつこちらへ理解を示す者も現れ始めました。』

ヴァンキッシュは静かに玉座の背へ身を預ける。

『急ぐな。』

『外交とは剣より遅く、剣より強い。』

『一日で築ける信頼など存在しない。』

『時間を味方につけよ。』

『承知しております。』

ヴォランテは深く一礼した。

少しの沈黙。

やがてヴァンキッシュが再び口を開く。

『賢族はどうだ。』

その問いだけは、ヴォランテも即答しなかった。

『……聖族へ知略を授けております。』

『さらに、小人族も兵糧、武具をはじめとした物資支援を継続しております。』

『予想通りか。』

ヴァンキッシュの表情は変わらない。

『ですが賢族内部の詳細までは掴めておりません。』

『森に籠る種族ゆえ諜報が難しく、我らの密偵も深部までは潜入できておりません。』

ヴァンキッシュは静かに目を閉じた。

『賢族は慎重だ。』

『一度決断すれば揺るがぬ。』

『だが――決断するまでが長い。』

ヴォランテは頷く。

『それが唯一の救いにございます。』

『聖族もそれを理解している。』

『ゆえに外交を重ね、賢族を戦へ引き込もうとしているのでしょう。』

『……そうだ。』

ヴァンキッシュは静かに立ち上がる。

長い外套がゆっくりと揺れた。

玉座の間へ重い足音だけが響く。

『敵は盤面を広げようとしている。』

『ならば我らも盤面そのものを書き換える。』

ヴォランテはその言葉を聞き、わずかに口元を緩めた。

『すでに、その布石は打っております。』

『ふっ……。』

ヴァンキッシュは僅かに笑みを浮かべる。

『お前は期待を裏切らんな、ヴォランテ。』

『恐れ入ります。』

『私は、魔皇様のお考えを形にしているに過ぎません。』

ヴァンキッシュは窓の外へ視線を向けた。

広大な魔国アーストン。

その先では、今も幾万の兵が命を懸けて戦っている。

『戦とは、剣だけで勝つものではない。』

『知略、外交、謀略……そのすべてを制した者だけが世界を手にする。』

その黄金の瞳には、揺るぎない覇道への意志が宿っていた。

そして魔皇は静かに告げる。

『さて――次の盤を見せてもらおうか。』

最後までお読みいただき、ありがとうございました。もし「続きが気になる」「おもしろい」と思ってくださったら、ページ下部の【ブックマークに追加】や、評価の値【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、毎日の執筆と更新の大きな励みになります!次回は、明日【21:00】に更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ