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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第二章 ASMR系Vtuberの私、陰キャのはずがMV作るとか無理すぎます!?
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47.打ち合わせの通話をすると、明るい人(?)が現れた

「それじゃ、始めるね……」


 メッセージを返信してから30分後、私は通話ボタンをタップする。

 私の隣にはお姉ちゃんがいて、私の手をぎゅっと握ってくれた。

 それだけで本当に心強い。


 私は通話アプリのスピーカーをONにする。

 お姉ちゃんにもSpring Worldさんがどんな人なのかチェックしてもらうためだ。


『はいっ、もしもーし』


 スピーカーから明るい声が聞こえてきた。

 女性の声だ、20代ぐらいだろうか。


「は、はじめまして、悠木ゆめめと申します」


『せ、世界に轟け春の嵐! Spring Worldでーす! ⋯⋯あぅ、どうでしたか?』


「⋯⋯と、とてもよかったと思います?」


 驚きすぎて、ほとんど二の句も継げなくなる。

 Spring WorldさんはVチューバーにありがちな、自己紹介の口上をやってくれたのだ。

 おかげでこちらの空気はかなり凍ってしまう。

 お姉ちゃんなんか、『この人、大丈夫!?』と小さめのホワイトボードに書いてくれる。

 こっちが聞きたい。


「こ、今回はご提案を頂きまして、その、ありがとうございました。何分、初めてなもので緊張というか、えと、色々質問がありまして」


 思った以上に早口になってしまう私。

 いけない、いけない、焦っちゃだめだ。


『し、質問ですかぁ、どんとこいですよ、わはは、あいたっ!?』


「だ、大丈夫ですか!?」


『大丈夫ですよ! さぁ、何でも聞いちゃってくださいっ! び、秒で答えますよ!?』


「なるほど」

 

 Spring Worldさんはどうやらお調子者って雰囲気である。

 曲調はミステリアスなのに、本人は話しやすい感じなのかもしれない。

 

「あ、あのぉ、今回、私にお声がけいただいた経緯について知りたいのですが、ご存じの通り、私、歌ってみた動画も出したことがないですし……」


 一番、謎に思っていたことについて斬りこむことにした。

 そう、なぜ、私を選んでくれたのか、である。

 私はカラオケ配信すらやったことがない。

 情けない話だけど、実績はゼロなのでる。


『……私、ゆめめさんの、声が好きで。めちゃくちゃ、かわいいと思っていて、その声を活かせば絶対にいいものが作れると思うんです。私、ファンですし、いつも聞いてますし! それに、一周年記念配信で少しだけ歌ってたじゃないですか! あのささやきボイス、最高によかったんですよねぇ、もう、鼓膜に染み入るゆめめの声みたいな、あいたっ!? ……な、なんでもないです』


「うわぅ……」


「うぉぅ……」


 お姉ちゃんまで思わず声を出してしまうほどの熱弁だった。

 私とお姉ちゃんの地声は似ているし、はもったのでバレてないと信じたい。


『それに、私、ゆめめさんのASMRが大好きで、ゆめめ様のささやきプレイリストとかも作っていて、それを毎日眠る前にキメルとですね、よく眠れるんですよ! もう、死んだみたいにぐっすりで、翌朝の目覚めもよくて、これなしじゃ生きていけないってぐらいで、神棚にゆめめさんのアバターを置いて拝んでるぐらいで、ぉう!? 話し過ぎました……』


 さらに熱弁は続く。

 どうやらファンの人だったらしく、褒められ過ぎて顔が熱くなる。

 お姉ちゃんは『この子、限界オタク? 知ってる人?』と聞いてくるけど、私は首を横に振る。

 私の配信でよく見るアカウントにSpring Worldさんの文字はない。

 もしかしたら、動画閲覧用には別のアカウントを使ってるのかもしれないけど。


「あ、ありがとうございます。その、嬉しいです。あ、あともう一つ質問なのですが、どんな曲をイメージされているのでしょうか?」


 次の質問に移る。

 Spring Worldさんの熱意は十分に伝わったと思う。

 時折、奇声を発するのはオタク界隈だとよくある話……なのかな?


『あ、それ聞いちゃいます? あいたっ!? ……えーと、ですね、やっぱりゆめめさんの持ち味を生かしたいなってことでASMR的な楽曲を考えています。甘々なささやきとかも入った曲を考えてまして』


「甘々ささやき……、け、結構、恥ずかしいかもですね」


『ゆめめさんと言えば、ささやきですよ! 脳がとろけるささやきボイス!』


「あ、いや、えと、ども……」


 褒められ過ぎて顔がさらに熱くなる。

 私は配信の時に、ささやきASMRをよくやっている。

 でも、それはあくまでライブ配信の時だけの一過的なものだ。

 音源として残るものに、自分のささやきを乗せるなんてどうなんだろう。

 お姉ちゃんからは『恥ずかしがるな! いつもやってんじゃん!』と叱咤される。うぅう。


『もちろん、メロディラインのしっかりした部分もありますよ! じ、実は、そのぉ、えぇと、ゆめめさんをイメージした原曲をボカロですでに作ってあってですねぇ』


「ほ、本当ですか!? あ、あのぉ、聞かせてもらうこともできますか?」


 これには驚いた。

 なるほど、もうすでに曲を作っていたからこその提案だったのか。

 しかし、どんな曲なんだろうドキドキしてきた。

 お姉ちゃんから『聞きたい!』とサインを出される。

 もちろん、私も同じだ。


『もちのろんですよっ! じゃあ、少し音質悪いかもですが、流しますねっ!えへへ……緊張します』


 彼女の言葉の後、スピーカーから音楽が聞こえ始める。

 テクノポップみたいなアレンジ。

 どこかで聞いたような――懐かしさと、ときめきが同時に押し寄せる

 それに、初音ミクがちゃんとささやいていて、その技術に感動する。

 素敵な曲だと思う。


 お姉ちゃんは『えっ、良くない? 本当にチャンネル登録者数100人の人?』などと失礼なことを書いている。

 もっと変な曲が来ると思っていたみたいだ。


「感動しました……いい曲ですね。う、歌ってみたいです」


 私は自分の思いを正直に告げる。

 お姉ちゃんは私の手をぎゅっと握ってくれた。

 Spring Worldさんの曲に興奮したのもあってか、姉妹そろって手に汗を握っていた。


『あ、ありがとうございます! 作成期間は3週間を目安にしています!』


「さ、三週間ですか……、うわぉ、結構、タイトスケジュールなんですね……」


『あ、はい! 原曲もできていますし、今回の歌はゆめめ様の機材でも録音できると思いますので。ゆめめ様の配信の音質から言って大丈夫だと思います』


「了解です。それとそのぉ、今回のミュージックビデオを無償でやっていただけるっていうのも謎といいますか、わからない点で……」


 私は質問リストの下から二番目について尋ねてみる。

 Spring Worldさんはメッセージで「無償にて請け負う」と書いていた。

 音響機器に多額の出費をしている私にとってありがたい申し出だ。

 しかし、世の中には只より高い物はないという言葉もある。

 あとから高額請求されたらと思うと聞かずにはおれなかった。


『じ、実は私、まだまだ駆け出しでして、名前を売りたいなっていう感じなんです。あ、ちなみにまだ学生なんですけど、あいたっ!? こう言っては何ですが、ゆめめ様に歌っていただけると私としてもチャンスでして。あ、でも、作品はしっかりしたものを作りますよっ!? 無償だからって手を抜くなんてありえませんっ!』


 そっかぁ、そういうこともあるのかと腑に落ちた。

 お姉ちゃんをちらりと見ると、『嘘ではなさそう』とサインボード。

 確かに、配信用に使ってくださいってファンアートを送ってくださる人はけっこういる。

 その中にはプロのイラストレーターさんもいるみたいだし、それと同じことなのだろうか。


『最終的な契約書みたいなのは私も見てあげるよ』


「う、うん……」


 お姉ちゃんはサインボードでは飽き足らず、私に直接耳打ちしてくる。

 それなら安心かもしれない、なんせ、お姉ちゃんは私の大先輩なのだ。


 だけど、だけど、私にはもう一つだけ疑問が残っていた。

 それは核心的な疑問だ。

 正直言って、これが分からないと、いくら曲が用意してあっても意味がないというか。


「あ、あのぉ、さきほどの曲、私に歌いこなせるでしょうか? ささやきの部分はいいんですけど、高音パートもあるみたいですし」


 そう、一番の問題は私の歌唱力が付いてこれるかってことである。

 今回の提案は失敗の許されるカラオケ配信ではない。

 作品として世の中に出すものなのだ。


 すると、Spring Worldさんは一呼吸おいて、こう言うのだった。


『その点は大丈夫です! 知る人ぞ知る歌の先生を知っていますので! その人がいれば、百人力でして、ひへへ、楽しみにしてくださいね。あいたっ!?』


 知る人ぞ知る、歌の先生……!?



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