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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第二章 ASMR系Vtuberの私、陰キャのはずがMV作るとか無理すぎます!?
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43.朝霧さん、春野セカイを尋問したら思わぬ変化球が飛んできた


「ゆめめちゃん、MV作りたいっぽいけど、どーする?」


 放課後、私とエリカとふみは空き教室で話し合っていた。

 議題はゆめめ様の関心を示していた歌イベントについて。

 

「どーするも何も、私たちじゃ曲作れないし無理でしょ? こればっかりはさぁ」


 ふみがお手上げのポーズをする。

 彼女の言うとおり、MVを作るにはありとあらゆるものが足りなかった。

 その中でも一番足りないのは、曲そのものだ。

 なんせオリジナルソングでのMVを作らなければならないのだから。

 私もふみに同調するようにうなずくしかできない。


「えー? あたしとふみはともかく、とーこはできるんじゃないのー? 音楽経験あるんだしー」


 エリカがニヤニヤしながら私の顔を覗き込んでくる。

 彼女とは小学校時代からの付き合いだ。

 当然、私の過去を知っている。

 くそ、腹の立つ女。


「私が……できるわけないでしょ? 歌を歌うのが少し得意だっただけ。曲なんて作れないわよ」


「こっわー。その顔、ゆうなちゃんが見たら泣くよー?」


 エリカに反論すると、へらへらとオーバーリアクションをする。

 私は怒ってるわけじゃない、ただ、力になれない自分自身が悔しいだけ。


「そういえば、あの教育実習生、あんたたちのことは全く見ないけど、ゆうなさんのことはよく見てるよな?」


「あー、それわかるー! なんていうか、ゆうなちゃんをチラ見するよね。私が積極的に目を合わせに行ったらすぐに目を反らすのに」


「そりゃー、エリカが怖いからだろ。うちも無理だったし」


「ひっどぉい、毒舌すぎるよー。私、怖くないよねぇ?」


「怖いんだよ、整いすぎてるやつはそれだけで」


「えー、嬉しくないなぁ」


 ふみとエリカが雑談に花を咲かせる。

 話題は最近、私たちのクラスにやってきた教育実習生に及ぶ。

 彼女はいつでもどこでもオドオドしていて、うつむいている。

 どこか、ゆうなさんを彷彿させる気もする。

 向こうもそれを感じ取って、ゆうなさんを見ているのだろうか。

 類は友を呼ぶというから、別におかしくもないことだけど。


「あ、それでさー、ゆうなちゃん優しいから、あの人の荷物を廊下で運ぶのを手伝ってたらしいよー?」


「ほーん、まじで天使じゃん」


「だよね。あの先生、あたしが声掛けたらすぐにいなくなるのに」


「……お手伝いをしていた? ゆうなさんが!?」


 なぜか胸騒ぎがした。

 いや、ゆうなさんは誰にでも優しいし、天使であることに異論はない。

 異論はないのだが、何か違和感がある。


 春野とかいう女、ゆうなさんに近づこうとしている?

 ゆうなさんの正体がバレたとか?


 いや、まさか、そんなはずはない。

 音楽のクラスとHR以外、ほとんど接触していないはず。

 バレようがない。


「でもまぁ、ゆうなさん、かわいくて優しいから気を付けないと変な奴に狙われそうだよな」


「あー、それ、マジでわかるー! 変質者に狙われそー! 痴漢とか」


 エリカ、あんたこそが、その変質者なんだけどね、という言葉が喉元まで出かかる。

 皮肉を言っている場合じゃない。

 私の脳裏に嫌なアイデアが生まれてしまった。


「よく聞いてほしいんだけど、もしも、あの春野が変質者だったら? どうするかしら?」


 ここで私は冷静かつ慎重に仮説を立てることにした。

 あの陰キャ・コミュ障・メガネ女の春野セカイが変質者であるとは限らない。

 だが、推しの崇拝者として最悪の事態は常に想定しておかなければならない。


「えー、私だったらー、個室に連れ込んじゃうかもー、それでしゃぶしゃぶとか食べてもらいたいー」


「本物はやっぱ違うな……。ええと、普通に考えたら、教育実習が終わるまでにコトを起こすんじゃない? あと二日ぐらいで終わりだろうし」


「それだ!」


 背筋に電流のようなものが走った。

 そもそも、クラスの中でゆうなさんにしか目を合わせない時点で何かがおかしいのだ。

 ゆうなさんがあの変質者に狙われているなんて、考え過ぎの杞憂かもしれない。

 だけど、もしも、もしも、最悪の事態が起きてしまったら!?


「うぅ、脳が、脳が破壊される……!?」


 壮絶なネトラレを想像してしまい、脳がはじけ飛びそうになる。

 鼻血も出そう。

 危険だ、これは、危険だ。

 

「とーこー、ネトラレも何も、ゆうなさん、あんたのものじゃないからねー?」


「空想ネトラレするとか、自分も相当、ヤバいでしょ?」


「う、うるさいわねっ! とりあえず、ゆうなさんを探しましょう!」


 ゆうなさんにメッセージは送ったものの、危険が迫っている場合には返信できないだろう。

 私たちはとりあえず、あの変態教育実習生が選びそうな場所を片っ端から当たることにした。


 まず、最初に飛び込んだのは音楽室だった。


 そこで私は目撃する。

 

 あの教育実習生がゆうなさんの前で這いつくばり、カバンの中から何かを取り出そうとしているのを!

 きっと、手錠だ。

 いや、もしかすると、ロープかもしれない。


「春野先生、そこまでですよ!」


 奴の野望を潰すべく、私は思い切り叫ぶのだった。






「で、言い訳を聞こうかしら、変質者さん?」


「うぅううう」


 私たちはファミレスにいた。

 向かい合うのは、春野セカイ、うちの学校の教育実習生だ。

 音楽室に乱入後、ゆうなさんはきょとんとした顔で何の問題もないと教えてくれた。

 着衣に乱れはない。

 そう、ゆうなさんは無事だったのだ。

 よかった、それだけで嬉しい。涙が出そうだった。


 しかし、話には続きがある。


「ねー、セカイちゃん、これ、なにー?」


 エリカが春野先生のカバンを覗いて、何かをつまみ上げたのだ。

 それはプラスチックのケースに入った、蛍光色の物体。


「あ、スライムなのじゃ」


「スライム?」


「あ、あ、あはははは、いやぁ、あの、そのぉ、やだなぁ、私、おもちゃを学校に持ってきちゃうなんて! あっちゃー、てへへ、いっけなぁい!」


 スライムを発見したとたん、春野セカイの挙動がおかしくなる。

 いや、もともとおかしいのだが、やたらと饒舌になったのだ。

 怪しい、これは怪しい。

 自分から容疑者ですと自白しているようなものだ。


 かくして私たちはゆうなさんと別れたのち、春野セカイをファミレスへと連行するのだった。



「これ、何に使うつもりだったわけ? あんた、ゆうなさんをぐちゃぐちゃにするつもりだったんでしょ!?」


「透子、声でかいよ!?」


「抑えて、抑えてー」


 ファミレスのテーブルにどんと、それを置いて詰問する。

 スライムは一見すると、子どものおもちゃだけど、そ、その、えと、大人もおもちゃのように使うのかもしれない。

 くそ、私にこんな羞恥を与えるなんて、この女、絶対に許さない。


「ひ、い、いぇ、そのぉ、普通ですよ! そんないやらしいことはないです。……なんていうか、耳元で、ぬちゃってやってほしくてですね、別に他意はなくてですねぇ……いや、でも、藤咲さんもいいですよって言ってくれたので、その」


「は?」


「いや、だから、その、スライムのぬちゃぬちゃした音が私、すごく好きで。楽曲制作にも活かせないかぁ、なんて思いながら、えへへ、いいですよね? ぬちゃ音」


「変態だこいつ」


「変態だわ」


 春野セカイから飛び出してきたのは、信じられない一言だった。

 耳元でスライムをぬちゃぬちゃするなんて、信じられない。

 この女、筋金入りの変態だ。

 そもそも、そんな変態じみた音を愛好する人類がいてたまるか。


「あー、わかるかも! ASMRでスライムやってる人いるよねー。私の好きな人はやってくれないんだけどさー、あの音、いいよねー! ぞくぞくするもん。あ、わかった、セカイちゃん、まさか、お仲間のひとだったりするー?」


 そう思った矢先、エリカが一気に裏切ってしまう。

 彼女は春野セカイの隣に座って、背中をバシバシ叩き始めた。


「ちょっと待って、お仲間ってまさか……」


 この人も、ゆうなさんの正体に気づいてるの!?

 血の気が一気に引いていく私なのであった。


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