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笑いがこだまする!?変態と食いしん坊の平穏(?)な日常


黄泉の門が封印され、玉藻の前の野望が潰えてから数ヶ月。季節は巡り、伯耆国米子の湊には、初夏の爽やかな潮風が吹き抜けていた。あの激闘の日々が嘘のように、町は活気を取り戻し、人々は穏やかな日常を謳歌している。…はずなのだが。

「おおおおおっ!なんと!なんと見事なる『お団子地獄』でござろうか!その白く柔らかなるお肌(餅)!その艶やかで黒々とした『秘められし部分(餡)』!そして、それを頬張るお福殿の、なんと幸せそうで、そして無防備なまでのお口元!この助平太、その『食の快楽』に溺れるお姿に、新たな『美の境地』を見出しましたぞ!」

米子の名物「大山おこわ」の屋台の前で、桃色助平太は、山積みのおこわを夢中で頬張るお福の姿を、恍惚の表情でスケッチしていた。その傍らでは、プルルンが呆れ果てた顔で頭を抱えている。

「このド変態!米子に逗留して数ヶ月、毎日毎日飽きもせずにお福の食いっぷりを観察しやがって!少しは真面目に『美の探求』とやらをしたらどうなんだゾ!」

「プルルン殿、これこそが真の『美の探求』なのでござるよ。日常にこそ、至高のエロスは隠されているのでございますからな!特に、お福殿のこの…むふふ、食べこぼした米粒を舌でペロリと舐めとる仕草など…ああ、たまらない!」

そう、助平太、プルルン、そしてお福の一行は、あの後、なぜか米子の町に逗留していたのである。表向きは「大山の霊気に触れ、心身を浄化するため」と助平太は嘯(うそぶ)いているが、本当のところは、お福が米子の海の幸・山の幸を制覇するまで動こうとせず、プルルンがその世話に明け暮れ、助平太がそんな二人(主にお福)の「日常のお色気」を心ゆくまで堪能するためであった。

「あらあら~、助平太様もプルルンちゃんも、そんなにわたくしのお食事が気になりますの?この『ののこめし(米子地方の郷土料理)』も、とっても美味しいですわよ~、一口いかが?」

お福は、口の周りを米粒だらけにしながら、満面の笑みで一行に料理を勧める。その天真爛漫な姿は、米子の町でもすっかり人気者となり、行く先々で「お福ちゃん、これ食べていきな!」と、様々な名物をご馳走になっていた。

そんな、ある意味で平和な(そして助平太にとってはエロティックな刺激に満ちた)日々が続いていたある夜のことだった。

一行が湊にほど近い旅籠で、お福が買ってきた大量の「ふろしきまんじゅう」を囲んで団欒していると、外から何やら奇妙な喧騒が聞こえてきた。

「ひゃはははは!あっははははは!止まらぬ!笑いが止まらぬのじゃ~!」

「お、おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」

「あはははは!何がおかしいのか分からぬが、とにかく愉快じゃ!うひひひひ!」

窓からそっと外を覗くと、月明かりに照らされた往来で、数人の町人が、まるで何かに取り憑かれたかのように、腹を抱えて笑い転げているではないか!その笑い声は、楽しげというよりは、どこか狂気を帯びており、見ている方が不安になるほどだ。

「な、なんだありゃあ?集団で酒でもかっくらったのか?」辰五郎ならずとも、助平太も首を傾げる。

「…いや、あれは尋常ではないな。笑い方が…おかしい」カゲリならずとも、助平太も眉をひそめる。

「おお!あの笑い続けるおなごの、恍惚と苦悶が入り混じった表情!そして、涙を流しながらも口元は笑みの形を崩さぬ、その倒錯的なまでのアンバランス!なんと!なんとそそられる『美』でござろうか!この助平太、その『笑いの地獄』に咲いた一輪の『狂気の華』を、スケッチせずにはいられませぬぞ!」

助平太は、不謹慎にも目を輝かせ、早速筆を取り出した。

「このド変態!人が苦しんでる(かもしれない)ってのに、不謹慎だゾ!」プルルンがいつものようにツッコミを入れる。

「あらあら~、皆さん、とっても楽しそうですわねぇ。何か面白いことでもあったのかしら?」お福は、状況が全く飲み込めていない様子で、ふろしきまんじゅうを頬張りながら首を傾げている。

翌朝になると、その奇妙な「笑い止まらぬ病」は、米子の町のあちこちで発生していた。魚屋の親父も、呉服屋の若旦那も、寺の和尚までもが、理由もなく笑い続け、中には笑い疲れて道端に倒れ込む者まで出始める始末。町全体が、異様なまでの狂騒と、その裏に潜む不安に包まれ始めていた。

「これは…ただ事ではござらませぬな。このままでは、米子の町から『真の笑顔』が奪われてしまう!そして何より、美女たちが笑い疲れて、その美しいお肌のハリを失ってしまっては、由々しき問題でござる!」

助平太は、ようやく事態の深刻さを(彼なりの解釈で)認識し、義侠心(という名のお色気探求心)に火をつけた。

一行は、情報収集のため、大山の麓にある星詠みの巫女・星見の庵を訪ねることにした。幸い、庵までの道は覚えており、星見もまた、米子の町の異変に気づいていた。

「…米子の空気が歪んでおります。これは、古(いにしえ)よりこの地に祀られる『嬉々(きき)様』…人々の笑いと喜びを司る、気まぐれな神の力が乱れている兆候やもしれませぬ」

星見は、水晶玉に映る米子の町の様子を眺めながら、憂慮の表情で語った。

「嬉々様は、人々の純粋な笑いを糧とし、その力で土地に豊穣をもたらすと言われています。しかし、その力が何者かによって悪用され、バランスが崩れると、人々は際限なく笑い続け、やがて魂の輝きを失ってしまうのです…」

「なんと!笑いの神様が!それはまた、なんと陽気で、そして…そのお姿は、さぞかし豊満で、悩ましげな笑顔を絶やさない美女に違いありませぬな!この助平太、その神様の『ご機嫌』を、我が変態的なる『奉納芸』で直してご覧にいれましょうぞ!」

「お前の奉納芸は、神様を怒らせるだけだゾ、ド変態!」

星見によると、嬉々様の力が乱れた原因は、大山の奥深くにある「せせらぎの祠」に奉納されている「静心の玉(しずこころのたま)」が、何者かによって穢(けが)されたためだという。その玉を浄化し、祠に再び奉納すれば、嬉々様の力も元に戻り、米子の町の異変も収まるはずだ、と。

「静心の玉…そして、せせらぎの祠…それはまた、冒険心をくすぐる響き!そして、その祠には、もしや…水の精霊のような、濡れ透け姿の美女が…むふぅ!」

助平太の妄想は、既に大山の奥深くへと飛翔している。

かくして、米子の町に笑顔を取り戻すため、そして新たな「美」との出会いを求め、桃色助平太一行は、再び大山の深奥へと足を踏み入れることになった。しかし、彼らの知らないところで、玉藻の前が残した妖力の残滓か、あるいは全く新たな脅威が、この「笑い止まらぬ病」の背後で蠢いていることを、一行はまだ知らなかった…。

そして、お福はといえば、「祠には美味しいお供え物があるかしら~?」と、どこまでもマイペースなのであった。

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