変態は世界を救う!米子の夜明けと愛とエロスの永遠なる旅路
伯耆国米子の湊、妖狐院玉藻の前は倒れた。しかし、彼女が開きかけた「黄泉の門」は、そのおぞましい口を閉じようとはせず、門の奥からは、全てを無に帰す「虚無の存在」が、形容しがたいプレッシャーと共に溢れ出そうとしていた。それは、形を持たず、ただただ純粋な「無」であり、見る者の心の奥底にある恐怖そのものを映し出すかのようであった。
「…これが…大いなる災厄…」カゲリが息を呑む。
「やべえ…なんか、吸い込まれそうだ…」辰五郎も、その圧倒的な存在感に言葉を失う。
「こ、こんなの…どうしようもないんだゾ…」プルルンが絶望に震える。
「あらあら…なんだか、お腹の中が空っぽになるような…寂しい感じですわねぇ…」お福までもが、その食欲を忘れさせるほどの虚無感に包まれていた。
絶望が一行を支配しようとしたその時、宙に浮遊していた七つの「天逆毎の鍵」の破片が、激しく共鳴し、それぞれが異なる色の光を放ち始めた!そして、遥か大山の方角から、星詠みの巫女・星見の清らかな声が、一行の心に直接響いてきた。
『…恐れることはありません、星の旅人たちよ。その七つの鍵は、古の災厄を封じた楔。そして、その楔を再び打ち込むには、全ての『想い』を束ねる、一点の曇りもない『心』が必要です…!』
一点の曇りもない心…。仲間たちが顔を見合わせる中、桃色助平太が、その瞳を爛々と輝かせ、一歩前に進み出た。
「一点の曇りもない『心』…ですと?ならば、この桃色助平太の、この『変態なる真心』こそが、今、この世界を救う唯一無二の力となるのでござるな!」
助平太は、「虚無の存在」が放つ圧倒的なプレッシャーにも臆することなく、その不定形の闇に向かって高らかに宣言した!
「おお、名もなき『虚無』なる御方よ!その全てを無に帰さんとする、絶対的なまでの『無の美学』!実に、実に素晴らしい!しかし!この助平太が求める『美』とは、虚無の先にあるのではなく、この混沌とし、時に醜く、しかしそれでもなお輝きを失わぬ、我々生命が織りなす、無限の『エロス』の中にこそあるのでございますぞ!」
助平太の言葉に呼応するかのように、七つの鍵の破片が、さらに強く輝きを増す!
「さあ、我が愛しき仲間たちよ!我々の『想い』を、この七つの鍵に込めるのでござる!そして、あの『虚無』なる御方に、我らが『生の喜び』、そして『愛と変態の素晴らしさ』を、とくと教えて差し上げようではござりませぬか!」
仲間たちは、助平太のあまりにも突飛な言葉に一瞬呆気に取られたが、その瞳に宿る、一点の曇りもない(歪みきった)信念と、仲間を想う(変態的な)心に、最後の勇気を奮い起こした!
「…守りたい人がいる…その想いを!」カゲリの持つ「潮満瓊」が青い光を放つ!
「江戸の平和、人々の笑顔…その想いを!」辰五郎の持つ「星霜の鍵」が黄金の光を放つ!
「みんなと一緒にいたい…美味しいものを食べたい…その想いを!」プルルンの額で(いつの間にかそこに移動していた)「神籬の石」が緑の光を放つ!
「美味しいものを、みんなで楽しく、お腹いっぱい食べたいですわ…!その想いを!」お福の持つ(いつの間にか握っていた)最初の鍵の破片が桜色の光を放つ!
そして、助平太が胸に抱く残りの三つの鍵の破片もまた、それぞれの物語と想いを宿し、赤、紫、白の鮮烈な光を放ち始めた!
「いざ!我が究極変態奥義、再び!そして、今度は仲間たちの愛と共に!届け!『愛と友情とエロスの七色ビッグバン・アタック』!」
助平太の叫びと共に、七つの鍵から放たれた光は一つとなり、虹色の巨大な奔流となって黄泉の門へと殺到した!それは、生命の輝き、愛の温もり、友情の強さ、そして…助平太の無限の変態エネルギーが凝縮された、究極の「生の肯定」の力であった!
「虚無の存在」は、そのあまりにも強烈で、あまりにも眩しく、そしてあまりにも「騒がしい」エネルギーの奔流に、初めて抵抗らしい抵抗を見せた。しかし、仲間たちの純粋な想いと、助平太の歪んだ、しかし一点の曇りもない「愛」の前には、絶対的な「無」すらも形を保つことはできなかった。
「ギ…ギャ…(こんな…こんな温かくて…気色悪い光は…初めてだ…消える…私が…消える…?)」
断末魔の叫び(あるいは無音の絶叫)と共に、「虚無の存在」は虹色の光に飲み込まれ、黄泉の門の奥深くへと押し返されていく。そして、七つの鍵の破片が、再び門を封じる楔となり、それぞれの位置に収まった瞬間、黄泉の門は眩い光と共に完全に閉じられた!
禍々しい妖気の塔は跡形もなく消え去り、米子の湊には、穏やかな初夏の夜明けの光が、優しく降り注ぎ始めた。空は澄み渡り、日本海の潮風が心地よく頬を撫でる。妖気にあてられて苦しんでいた人々は、悪夢から覚めたように安堵の表情を浮かべ、町には徐々に、しかし確実に活気が戻り始めていた。
「…終わった…のか…?」辰五郎が、朝日を浴びながら呟く。
「ええ…終わったようですわね…なんだか、お腹が空きましたわぁ」お福が、にっこりと笑う。
「アタイ…なんだか、すごく疲れたけど…すごく嬉しいんだゾ!」プルルンが、助平太の頭の上でぴょんぴょん跳ねる。
カゲリは、静かに朝日を見つめ、その瞳には穏やかな光が宿っていた。
そして助平太は…
「おおおおおっ!この夜明けの光!この平和の香り!そして、この仲間たちの美しい笑顔!まさに、全ての『美』が調和した、究極の『ハッピーエンド』でござるな!この助平太、この感動を、新たなスケッチブックの最初のページに、魂を込めて描き記さねばなりませぬぞ!」
助平太は、朝日を浴びてキラキラと輝く(ように彼には見える)仲間たちの姿に、新たな創作意欲を燃やしていた。
数日後、米子の町はすっかり元の活気を取り戻した。大山の知恵の精霊と、星詠みの巫女・星見は、一行の偉業を称え、七つの鍵が再びそれぞれの守護者の元へと戻ったことを告げた。もう二度と、黄泉の門が開かれることはないだろう、と。
そして、助平太一行は、それぞれの新たな道へと旅立つ時が来た。
桃色助平太は、新たな「美」を求め、そして「この世の全ての美女に、我が変態的な愛を捧げる」という壮大な(迷惑な)誓いを胸に、再びあてのない旅に出ることにした。もちろん、そのお供には、毒舌ながらもどこか助平太を放っておけないプルルンと、「助平太様と一緒なら、きっと毎日美味しいものが食べられますわ~」と目を輝かせるお福の姿があった。
「世界の美女たちよ!そして、まだ見ぬ『究極のエロス』よ!この桃色助平太が、必ずや貴女方を見つけ出し、その『美』を、心ゆくまで愛でてご覧にいれますぞ!」
カゲリは、星見に師事し、星読みの術と結界術を本格的に学ぶことを決意した。影から人々を守り、そしていつか、助平太のような「規格外の存在」をも正しく導けるようになるために。時折、助平太の変態的な噂を風の便りに聞き、深いため息をつくが、その口元には微かな笑みが浮かんでいることもあった。
辰五郎は、江戸へ戻り、め組の若頭として、以前にも増して江戸の町と人々を守るために奮闘していた。彼の火消しとしての心意気は、米子での経験を経て、さらに熱く燃え上がっていた。助平太からの珍妙な絵手紙が届くたびに、「あのド変態、また何かやらかしてやがるな…」と頭を抱えるのが、新たな日常となった。
白雪姫は、鈴森の藩を見事に復興させ、領民に愛される賢君としてその名を後世に残した。彼女の美しい歌声は、藩だけでなく、多くの人々の心を癒したという。
阿蘭陀お龍は、長崎で助平太の「変態エネルギー」に関する論文をまとめ、南蛮の学会で発表し、大きな反響(と困惑)を呼んだらしい。時折、助平太に「新たな実験材料が見つかりましたわ」と、怪しげな手紙と試薬を送りつけてくるという。
天狗の隠れ里の長老は、大山の平和を守り続け、鋏之介と墨之丞は、乙姫様の眠る竜宮城(少しずつ元の姿を取り戻しつつある)を、以前にも増して忠誠心に燃えて守護しているという。
桃色助平太の「美の探求」の旅は、これからも続く。その行く先々で、お色気とコメディと、そしてちょっぴりの感動(?)を振りまきながら…。
世界の片隅で、今日もまた、どこかの美女が、あるいは奇妙な妖怪が、はたまた道端の石ころさえもが、助平太の鋭敏なる変態アンテナに引っかかっているのかもしれない。
そして、そんな彼の傍らからは、きっとプルルンの元気なツッコミが、いつまでも青空に響き渡ることだろう。
「このド変態がぁーーーーーっ!」




