90 1次試験 5
まず最初に現代文・古文・漢文を一通り見渡してみる。現代文・評論は、インターネットの文化とSNSにおけるキャラの独立性にかかわる文章だった。小説は尾崎芳生(戦前の男性作家)著の文章で、主人公の清が戦争に行く父を見送るという内容のようだ。少しばかり難解そう、という印象は受けた。
古文は14世紀に成立した、船を渡す人にかかわる物語のようだ。漢文は古代中国の2人にまつわる逸話(中に七言絶句が入っている)だということがわかった。
ぱっと見ではあるが、評論と漢文がやりやすそうだったので、私は順に目を通していった。続いて小説→古典の順に解いていき、すべてを解き終わった段階で残り時間はあと10分といったところだった。
「漢詩、これであってるよね……?」
私は脳内で独り言を言った。七言絶句(7文字×4行の漢詩)では、1行目・2行目・4行目の7文字目の文字が韻を踏むことになっている。1行目の7文字めは「江」、4行目は「同」。2行目の7文字目に入る文字を選ぶ問題なのだが、選択肢のうち、「窓」「合」の2択にまでは絞れていたのだ(他の3つは、そもそも韻が違う)。
私は、文脈等も考慮し一生懸命絞り込んでいった。その瞬間、いつだったか(アイドル時代)のしふぉんとの会話をふと思い出した。
------------
「何食べてるの?」
私はしふぉんが食べていたカップ麺を見た。彼女は、ふたに書いてある文字を見てこう言った。
「中国のチャンナン、漢字で長江の江に南ね、のほうに行ったとき中国のカップヌードルを買ってきたんだけど、現地の表記でハッメイダオ(合味道:Haap Mei Dao)っていうんだって。中国風に少しアレンジされてるけど、普通においしいよ」
------------
合というのは、どうやらハップのような発音のようだ。一方、江というのは、「ン」で終わる発音のようだ。古典の授業で、現代仮名遣いが「こう」のような表記になっている者は、古代中国語ではpで終わるもの、ngで終わるもの、aoで終わるものがあると言っていた気がする。
窓の発音はわからないが、合と江の発音は違うようだ。したがって、答えは窓になる。私は、窓にちゃんとマークしていたようだった。
「よかった……」
しふぉんとの会話が漢文のテストで役に立つなんて全く思っていなかった。彼女にありがとう、と脳内で念じてると、試験監督が試験終了の合図を告げた。
「試験終了! 筆記具を置いてください。これ以降、書き直しがある場合は試験官の監視のもとそれを行うことができます。まずは、解答科目、氏名・受験番号・試験会場番号に間違いがないかを確認してください。これが、訂正を行う最後のチャンスです」
私はまたしても急に不安になり、マークシートを確認した。
「1、0、3、……」
うん、間違っていない。私はそのことを再度確かめた。さっき社会でも同じように不安になったと思う。
「それでは試験用紙を回収します。これ以降の訂正はできません」
私は、会場を回る試験官にマークシートを提出した。この後、試験監督は話した。
「それではこれで社会の解答時間が終わりとなります。つぎの英語は15時30分から始まります。その15分前の15時15分にはここにいるようにしてください」
私は、教室を出てまたショウの所へと向かっていった。




