65 帰り道
急いでいるわけではないが寒いので早足になってしまう。ショウは無事についてきているようだ。
私は(名前は伏せたが)ショウと付き合ってることを、ヘリアンサスガールズのメンバーに話した。
みんなで話していてそのことについて1回聞かれたとき、答えに窮した。本当のことを言うべきか、嘘をついて「付き合ってない」と言っておくべきか。私は「嘘をつかない方がよい」と判断して、メンバー以外の誰にも言わないでねという念を押したうえで真実を13人に伝えた。
「言っちゃったけど、別にいいよね? 苗字はしふぉんにしか言ってないし、下の名前は誰にも言ってないけど」
ショウは、恋愛禁止ルールはないんだしいいよ、と言ってくれた。
当然ヘリアンサスガールズの私のTwitterは活動を停止しているので、恋人がいることはファンのみんなには伝わっていない。ただ、拓也さんは私にTwitterで「遠くに行ってしまっても幸せになってほしい」的なことを言っていたため、もし知ったら(ショックを受けるかもしれないが)応援してくれるだろう、と私は勝手に思っていた。
「ショックかもしれないけど伝えた方がいいことがあってね。しふぉん、大学受験の影響で後1年ちょいで活動辞めちゃうんだって。どこの大学に進むのかは考えてないっていってたけど、地元の大学じゃなくて、実家が横浜にあるから、そこから通えるところに行くつもりらしいよ」
私は話す。彼女はA野駅(C南駅から乗り換えなしで行ける場所)の近くに実家がある。しふぉんは(ショウと同じように)生まれつきの理系らしい。国語が苦手で数学・理科が強いタイプとのことだ。もしかしたら、ショウが目指しているといっていた大学と同じかもしれない。
ショウはそのことについて前向きにとらえているようだった。
今、2人でC南からC北をつなぐ道(通称、KMウォーク(Kは北、Mは南の頭文字))を歩いている。私としては拓也さんに久しぶりに会いたい・少し話したいと思っていたが、かなわずに少しばかりがっかりしてしまった。
ショウは、まあ仕方ないね、とだけいって励ましてくれた。私はショウに、舞台から拓也さんを見つけることはできた、推してくれている人の中で、一番印象に残ってるファンなので、すぐ見分けられたと話した。
「拓也さんって、どんな人なの? 外見的な特徴を教えてほしい」
私は、眼鏡かけた身長170cmぐらいの人だよ、と伝えた。ショウは、多分僕は見つけられなかったと思う、会場を見渡した範囲では、思い当たる人はいなかったと言っている。
「そういえばさ、来年公開される映画の話したっけ」
ふと思い出した話題をショウに振ってみる。ショウは、まだ聞いてない、と言っていた。
2022年12月4日、映画の概要が公開された。あらすじは、(かんたんに言えば)タイムマシンを開発した主人公が公開実験を行うが大失敗し旦那を失う。彼を取り戻しにタイムトラベルを行って過去を変えようとするという物語だ。
その映画にしふぉんが出演することが決まったという話だ。今まで公開することができない情報だったが、ついに一般公開されるということで、私はショウに話すことに決めた。
彼は気になっているようだ。私はショウにLINEでリンクを送って、ここ見ておいて、と言っておいた。
KMウォークはイルミネーションでまぶしく彩られている。全く意識していなかったが、もうすぐクリスマスだ。
「クリスマス、どこか行く?」
「行きたいけど、混んでるし、それなら別の日にしない?」
私は人混みがあまり好きではない。わざわざ混んでいるところには行きたくない、クリスマスの日は家でゆっくりしたい、と思っている。
たわいもない話をしていると、あっという間に私の家の前についていた。じゃあね、といって、私は家の中に入っていった。




