53 日常 2
日常は平凡であり、そんな盛り上がるようなことは起こらない。ただ、コロナウイルスを経験してきたことが原因で、日常が大事だということにも気が付いた。
HelinAnswers企画で使われた歌「僕たちの約束」の歌詞に「夜空を仰ぎふと思う いつもどおりが幸せだ」というものがあった。皮肉にも、開催されたのは、そのことを実感したあとだった。
そういえば、ショウにはまだその企画のことを詳しく話していなかった。使われた歌は企画専用のCDに入っており、一般公開・販売はされていない。たぶん、ショウはその企画をあまり知らないだろう。
今は学校であり、そのことについて話すわけにはいかない。ショウからも、校内でアイドル時代の話はしないと約束されている。私は、放課後の帰り道で話すことに決めた。
私は鞄を床に置き、机の中から1時間目に使う世界史の書き込みテキスト(書き込めるように作られているテキスト)と資料集を取り出した。世界史自体は苦手だが、資料集を見ているのは楽しい。私は、先生の板書をノートの余白にいろいろ書いているうちに、気が付いたら眠りについていた。
目が覚めると10時半。古典の授業が終わろうとしている。漢文で七言絶句についてやっているようだったが、何も聞いていなかった私は理解できなかった。
「おまえさ、テスト大丈夫なのか?」
ショウが意図は不明だが聞いてくる。煽っているようにも聞こえるが、私も煽りは多いようなので人のことは言えない。
「まあ大丈夫でしょ、将来使わないから赤点じゃなければいいだろうし」
私は思っていることを正直につたえると、ショウは何か言ってきた。
「古典っていうのは、”将来使わない”と思ってたけど、それは間違いだって気が付いたんだよ」
将来使わないにアクセントをおいて彼は話す。そして彼はそれに続けた。
「”今も使わない”んだよ。将来じゃなくて」
私は思わず笑ってしまった。彼の言うことは確かに正論である。私は、使うことのない古典の教科書をロッカーにしまって、数学の教科書を持ってきた。
私は思わず笑ってしまった。彼の言うことは確かに正論である。私は、使うことのない古典の教科書をロッカーにしまって、数学のプリントをまとめてあるバインダーを持ってきた。
数学Iは先生作成のプリントを利用していて、教科書は使わない。今は三角比の授業をしている。私は、問題を順番に解いていった。
「高さ634mの東京スカイツリーのてっぺんをxメートル離れた地点Aから見上げたら地面から測った角度が20°になった。このとき、xの長さを四捨五入して整数で求めよ。ただし、目の高さは無視できるものとし、cos20゜=0.9397、sin20°=0.2420、tan20゜=0.3640、tan70°=2.7475とする。」




