41 帰り道
楓ちゃんと山村くんは他の人たちには付き合っていると認識されている。実際、私もそのように認識しているが、本人は否定しているようだ、私とショウとの関係も、周りからは二人と同じように見られているのだろうと推測している。
2分後、ふたりは別々に戻ってきた。クラスの全員がそろったのを確認して、大阪先生は話し始めた。
「とりあえず1日目、お疲れさまでした。明日もまた頑張っていきましょう!」
加えていくつか連絡があったが、私たちに関係するものはなかった。
教室の内装は、崩れ切っているというわけではないものの、ガムテープが剥がれている場所があったり、他にも椅子が倒れたりしている場所がある。私たちは、みんなで協力して放課後の時間を修繕にあてた。
30分ほどかけてある程度直せば、もう明日使えそうな状況にはなった。景品の飴とカップ焼きそばがなくなりそうで今のうちに調達しておこうとなったので、松川くんが1人で買い物に行った。
「ショウが行けばよかったじゃん」
私は言ってみたものの、ショウは疲れ切っていて無理だと話す。正直、私はあまり疲れていない。
「あと30分ほどで最終下校時刻になるけど、なっち残る?」
私は、一応残るつもりだ、と言った。ショウも、家に帰っても何もすることがないようだ。私たちは。このまま最終下校時間まで残った。
いつも通り、私たちは二人で家路についた。楓ちゃんは山村くんと一緒にファミレスSにデートに行くらしい。
私たちの学校の生徒の8割は電車で通学しているようだ(1割がバス、5%が駅前まで自転車、残りの5%が徒歩)。徒歩で学校まで向かう人は(近くに住んでいる人を除けば)多くない。だから、放課後にふたりが帰り道”ずっと”一緒にいることを目撃されることは少ない(というか、一度も目撃されていないと思う)。
太陽は沈んでいるが、まだ暗くはない。家から学校まで40分強なので、家に着くころにはすっかり暗くなっているだろう。ふたりで話をしながら帰っていった。
明日は軽音部の活動はない。実行委員会の仕事(10時からの金券販売・整理)、シフト(14時からの1時間)を除けば、もう完全に自由だ。
私たちは、ベンチに腰掛け、お茶を飲んで気分を落ち着かせた。少し前までは蚊が多かったのだが、最近はすっかり見ない。勿論いないに越したことはないのだが。
「今日、ちょっとあっちの方から帰ってみない? 少し遠回りしたくなった」
私はは、池のあるT公園の緑道の方を指さした。普段通学に使う道は固定されているため、たまには普段通らない道を通りたくなったのだ。
「あ、T公園の方?」
歩いていると横を通るのだが、公園の中に入ったことはなかった。池があることは認知しているが、ちゃんと見てはいなかった。
「ここの池って、昔テレビの企画で1回からっぽにされたらしいよ」
「あ、それYouTubeでみたことある!」
私は、YouTubeでよく「池の水を抜く」動画を見ていた。だいぶ前ではあるが、ここの水が抜かれていた記憶がある。私は、今言われて思い出した。
「テレビ東京だから、見てないと思ってた」
私の所では確か放送されていなかった記憶がある。少なくとも、私はテレビでは見ていない。ショウに、YouTubeで見た、ということを伝えた。
少しばかり暗い。怖くはないのだが、暗いのは純粋に苦手だ。変質者がどうこうとか言うことではなく、暗闇が苦手、というニュアンスだ。寝るときも、部屋を真っ暗にはしないタイプだ。
「帰り道に、本当に真っ暗な竹藪があるからね」
どうやら、ショウは全く怖がってないらしい。私は、少しショウのことを尊敬した。
私たちは、池を抜けて帰っていった。緑道の川のせせらぎの音が快適で、ストレスが体からするすると抜けていくのを感じる。
暗いけど安らぎを感じるこの道の横に植えられている木からは、清々(すがすが)しい風が吹いてくる。最近疲れてばっかりだった私たちは、ベンチに座って心を完全に任せて落ち着かせた。




