37 学園祭当日 1日目 6
「もう12時じゃん、そろそろ弁当食べなきゃ」
時計を見ていると、もう正午を回っていることに気が付いた。
「僕は本当は吹奏楽部に入ろうと思ってたんだけど、今思うと軽音にして良かったって思ってる」
入学してすぐのころ、ショウから部活についてLINEでの連絡が来たことはまだ覚えている。私が軽音部だということを話す前に、ショウは音楽系の部活に入ろうと思っていると言われた記憶がある。
そういえば、ヘリアンサスガールズのしふぉんは中1のころ吹奏楽部に入っていた。トロンボーンを担当していたが、すぐに退部していた記憶がある。本人曰く、「両立が困難だったから」のが理由だということだ。
2人を比べてどうだとか言うつもりはないが、しふぉんと同じく1期生であるそかか(笠山爽花)は吹奏楽部をいまだに続けている。確かクラリネットを演奏していたと思う。
人によってキャパシティーは違うのだろう。人にできることが自分にできるとは限らないし、逆もしかり。普段のどうでもいい話ならしふぉんに煽りを入れていたかもしれないが、ネタにしていいものとしてはいけないものの分別は自分でもつけている(つもりだ)。
「きみが推してるって言ってるしふぉんは昔吹部やってたんだよ、すぐやめちゃったけどね」
私の言葉を受けて、ショウは話し始めた。
「分かると思うけどさ、ぼくって結構多趣味な人間なんだけど。いろいろやりたいことはあるんだけど、結局虚無ることを恐れちゃって結局続かないんだよ。中学校の頃に田中って人がいたんだけど、その人もすぐやめちゃってて、そのせいで勝手に大変だというイメージがついてて」
私は相槌を打ちながら彼の話を真剣に聞いていた。
「続くものと続かないものってあるんだよ。作曲自体は嫌いじゃないし、何なら軽音部関係なく今でもやってるけど、それは1人、それか少人数でできるから続くんだと思ってる。軽音部に入ろうと思ってたのも、少人数でできるからなんだよね。基本的にバンドのメンバーも同学年だから、あまり気負わなくていい?っていうのかな、そういう所で軽音楽に決めたんだよね」
私は、直感を信じるのが一番だよ、と伝えた。ショウは笑っている。
時計を見るともう12時48分だ。ふたりはトイレを済ませて、2階の音楽室まで急いで向かっていった。




