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Light or Thorn  作者: Hoeplow
第二話
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01

第二話


 バイルの葬儀はつつがなく行われた。ダグを含む隣家のクロート家が協力をしてくれたからだろう。葬儀が終わりテトは一人きりの家に帰り着いた。いつもの癖でただいま、と呟いたが返事は当然帰ってこなかった。二人では手狭だった小さな家も今は酷く広く感じる。力無くソファに座り、テトはぼんやりと天井を見上げた。


「僕は……どう、すれば良いのかな……」


 そう呟いた声は、震えていた。

 自分の名前はテト・ネオペルトで、伝説の光使いソル・ネオペルトの子孫。ソル・ネオペルトは五百年前にエルライード王国の前身であるハタナ王国とナタラ王国の国境で起こった戦争――茨戦争を停めた英雄だと基礎学校で習ったことがある。それからエルライード城にはチェリルという姫がいて、その人を助けなければならない。そして他の光使いを集めて魔王サテルを討つこと。父が亡くなっただけでも受け入れ難いことだというのに、死の間際の彼から伝えられた事実はもっと受け入れ難いことだった。

 テトは髪をくしゃりと握ってからソファから立ち上がる。バイルが使っていたベッドの上に寝かせていた剣を手に取った。その鍔に嵌められた黄色く輝く石は、テトが思い出せないほど昔から首に下げている石と同じに見える。

 一瞬、頭にキーンという高い音が響いた。


「……とりあえず、生活をしなきゃ」


 それが現実逃避であることは分かっているが、一体何をどうすれば良いのか分からない。父の遺志を無視するつもりはない、けれどもう少しだけ落ち着いてから始めたいのだ。

 千年前にあったという魔王と光使いの戦いは有名なおとぎ話だ、おとぎ話のはずだった。それを突然自分が光使いで他の光使いと魔王を倒さなければいけないと言われても、現実味は無い。来週には金を貸した男との約束で再び王都に行く、その時に王都の図書館で光使いについて調べてみようとテトは決意した。



     * * * * * * * * * * * * * * *



「テト、どこ行くんだ?」


 バイルの死から一週間、乗合ティミンの停留所に向かっていたテトにダグは声をかけた。


「王都に行ってくるんだ。人と約束してて」

「ティミンの札はちゃんと持ってるか?」

「もちろん」


 テトはそう言って鞄から乗合ティミンの札を取り出しダグに見せた。乗合ティミンの運営は国が行っている。広大かつ危険なエルライードの土地を国民が移動しやすくする為だ。憲兵が必ず一人は乗車し、魔物が襲ってきた時には対処してくれる。そんな便利な乗合ティミンだが、乗るにはテトの持つ札が必要だった。毎年一回、100BC払うことで国からこの札が発行される。100BCとは人間一人にとって五食分の食費程度の金額だ。これだけ安価で一年使えるのは、国の事業だからだろう。基本的には国民の誰でもこの札を購入することはできるが、過去に犯罪を犯した人間は作ることができない。


「ちゃんと持ってるなら大丈夫だな。気をつけて行ってこいよ! 母さんが今日の晩飯はキペンのミルク煮込みって言ってたぜ!」

「それは楽しみだよ。ありがとうダグ」


 バイルが亡くなってから、テトの食事はダグの母親が面倒を見てくれていた。キペンという鳥の肉を野菜と一緒にミルクで煮込んだその料理ははテトの好物の一つだ。遅くなる前に帰ってこようと決めて、テトはダグに手を振った。

 村の入口に立つ憲兵が停留所で待つテトをチラリと見る。テトは彼のことを睨みつけた。村の人の為によく働く良い人だと思っていた、けれど恐らくバイルの殺害に関わっているはずである。それでも何の確証も無いし、今のテトには彼とやり合うだけの力も無い。何より憲兵たちは不老不死の人形なのだ、ただの人間であるテトに勝ち目は無いだろう。

 テトは悔し気に自身の腰に下げた剣を握り締めた。

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