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Light or Thorn  作者: Hoeplow
第一話
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01

第一章 ~光使い~


第一話



 魔王サテルが復活し、エルライードは彼に乗っ取られ国王はサテルとなってから十二年が経った。惨劇の舞台であるエルライード城も今や茨に包まれ何人たりとも入ることはできない。サテルが新たに王城として選んだのはナタラ城と呼ばれていた城だった。

 今から二十年前まで、エルライードという国は存在していなかった。エルライードの真ん中を東西に走るフォート山脈を挟んで、北をナタラ王国、南をハタナ王国として存在していたのだ。千年近く友好関係を築いていたナタラ王国とハタナ王国だが、最後のナタラ国王であるサクナが突如としてハタナ王国に宣戦布告を行ったことで戦争を始めた。二年間の戦争の果てに二国は和平協定を結び、一つの国エルライードとなったのだ。ハタナ城をエルライード城と名を改め、ハタナ国王だったテルナはエルライード初代国王となった。

 そして戦後空になり放置されていたナタラ城をサテルは自身の城としたのだ。旧ナタラ王国側の中心にあるナタルム州の州都ナタルム、そこが王都となった。

 そんなナタルムに近い小さな村ルクサイト。十六歳になったテトは父バイルとともにその日も農業に勤しんでいた。日が昇る頃から畑を耕し、そろそろ昼時だという頃にバイルは外出の用意をし始める。


「お父さん、どこか行くの? またあっち側の集落のお友だちに会いに?」

「いや、少し王都に買い物に行こうかと思ってなぁ」

「王都に⁉ 僕行きたい!」


 あっち側の集落、というのはバイルがほぼ毎日行っているルクサイトから少し離れた所にある集落だ。村からも見えるほどの近さで歩いて一時間かからないほどの距離だとはテトは聞いている。これまで何度もバイルについていこうとしたことはあるが、その度に止められついぞ行ったことはなかった。

 バイルが外出の準備をしているのでまたその集落行くのかと問えば、王都に行くと言うではないか。テトは目を輝かせ自分も行きたいと言う。ルクサイトでの暮らしに不満は無いが、やはり都会に行くとそれだけでワクワクするのだ。村では見たことがない物が並ぶ店、活気溢れる市場、都会人らしく洗練された人々を眺めるのは楽しい。


「そうか、なら頼めるかの……テトが王都に一人で行くのは初めてじゃが……」

「心配ないよ。隣のダグだって僕と同じ年なのに去年からもう一人で王都に行ってたんだよ?」

「そうか……そうじゃな」


 バイルは感慨深げに微笑む。彼は用意していた鞄をテトに預けた。中には買う物が書かれたメモ、財布、それから乗合ティミン用の札があった。

 ティミンというのは四足歩行で草食の動物だ。この国には人を運ぶ動物としてティミンとパンテラの二種がいる。広く親しまれているのはティミンで、性格も穏やかなうえ繁殖もし易く、草食の為餌代も高くない。そのうえ重い物を運ぶことにも優れている為、ティミンに車輪付きの荷台を引かせ、荷台に客を乗せる乗合ティミンがエルライードにおける一番の移動方法だ。一方パンテラは気性が荒く人に慣れさせるまでにも時間を要するうえ、肉食の為餌の確保も金がかかり、更には繁殖も難しい為あまり普及はしていない。しかしながらティミンの十倍近くの速さで走る為、裕福な人々にとっては良い移動手段だった。ティミンやパンテラ以外ならば徒歩の移動しかないが、現在のエルライードには魔物がいる為徒歩で移動する人は命知らずの旅人ぐらいである。

 魔物とは野生動物の狂暴化し人を襲うようになったものだ。サテルがこの国を支配するまで存在していなかったが、彼が支配するようになってから野生動物の狂暴化が顕著になった。幸い一度家畜として使役魔法がかけられた動物は狂暴化しないが、逆に野生状態で一度でも魔物になってしまえば使役することはできず、正気に戻ることもない為、討伐するしかないのだ。

 その魔物討伐の為に、サテルは各地に彼の部下である憲兵隊を配備している。エルライードにある十四の州・準州の全ての州都に各支部を置き、更には各町村に最低一人の憲兵を駐在させていた。魔物討伐だけでなく、各地での治安維持も憲兵隊の主な仕事だった。サテルの統治の前は各地の自警団が行っていたことである。

 憲兵隊というのは彼が創り上げた人形の集まりだ。不老不死の身体を持つ強い兵士たちは何故かその目に光を映さない。その中でも特に優れた四人の人形の話はテトの住む村にも伝わっていた。彼らはAce In The Hole-通称AITHと呼ばれ魔王サテルの切り札と言われている。その中でも第一位の『ダイヤ』は国一の剣士と言われているほどだ。四人がそれぞれ自らの部隊を持ち、更に各部隊にいくつもの小隊がある。それらが憲兵隊を成しているのだった。


「少しだけ大目にお金を入れておくから、何か良い物を見つけたら買ってくると良い」

「本当に……⁉ ありがとう、お父さん!」

「テトがいつも一緒に畑を耕してくれるおかげで手に入ったお金じゃからな」


 父の気遣いにテトは嬉しそうな顔で鞄を抱き締める。あと二年で成人を迎えるが、その顔にはまだまだ幼さが残っていた。

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