第97話 閃煌
名が落ちた瞬間、世界の音が薄くなった。
【01(ライトニング)】の二刀が、同時に走る。
振りかぶりは最小。
踏み込みも、ほとんど残らない。
あるのは、白の核へ向かう二筋の光だけだ。
右が、層を剥ぐ。
左が、剥いだ奥の核を貫く。
一本では面を切れても、核まで届かなかった距離を、二刀が役割を分けて潰す。
『——ッ』
声にならない息が、布の下で漏れる。
出力が、限界まで乗る。
00を見た夜の情報量に近い奔流が、今度は彼女の側から白へ叩き込まれる。
核が、弾ける。
派手な爆発はない。
音もない。
巨大な白が、内側から粉になり、空へ、地面へ、音もなく散っていく。
地平を埋めていた輪郭が、消える。
残るのは、薄い粒子の雨と、焦げない静けさだけだ。
【01(ライトニング)】は、その場に片膝をつく。
二刀の先が、路面に触れる。
立てない。
なのに、白はもう立ち上がらない。
遠方で、【02(ヘイル)】が短い息を吐く。
『……終わったか』
【03(レイン)】が、空を見る。
『……あいつの、勝ちだ』
【04(イラプション)】は弓を下ろしたまま、測れない斬撃の結果だけを受け取る。
04以降も、何もしていないようにしか見えない決着だった。
対象だけが、二つに断たれて消えている。
環象社の端末が、遅れて点滅を止める。
ランク表の外で暴れていた異常が、記録上は「収束」に落ちる。
【01(ライトニング)】は、ゆっくりと二刀を鞘に戻す。
布の下の眼は、光を持たない。
持たないまま、散っていく白を、視覚以外で見送る。
『……まだ、青は戻らない』
誰にも届かない言葉だった。
残響の核は消えた。
消えても、世界の歪みそのものは残る。
対症療法の外側で、最大の牙だけが折れた夜だ。
膝をついた影が、しばらく動かない。
巨大な白は、もうない。




