第96話 二刀
二本の刀が、白の中へ入る。
右が裂き、左が押さえる。
一本のときの最短とは違う。
面を削り、核を追い、残響の再結合を許さない軌道が連続する。
白い粒子が、【01(ライトニング)】の装甲を削る。
防いでも、全部は弾けない。
00の夜に近い熱が、布の下の眼に刺さる。
『……消えない』
声が、震える。
怒りだけではない。
焦りと、昔の感触と、失った光が同時に来る。
遠方で、立てない【02(ヘイル)】が空を見る。
【03(レイン)】も、雨の残る街から、その圧だけを感じ取る。
『……やってるな』
『あいつの土俵だ』
【01(ライトニング)】は、踏み込んだまま止まらない。
二刀が交差し、白の層が剥がれる。
剥がれても、奥からまた湧く。
対症療法の延長ではない。
残響の核に、直接触れている。
『00は、消えた』
誰に言うでもない。
『なのに、残ってる。
光を奪ったものが、まだ世界の底にいる』
涙が、布の端を湿らせる。
見えない眼から、熱だけが溢れる。
『許せない』
二刀の速度が、上がる。
感情がむき出しのまま、技術の最短に乗る。
白が、初めて大きく後退する。
その奥に、核が見える。
見える、というより、視覚以外の感覚が核の位置を確定する。
【01(ライトニング)】は両膝をわずかに落とし、二刀を体の横へ構える。
次の一閃で、終わらせるための形。
『——閃煌』
名前が、静かに落ちる。
白の核が、その名に反応するように歪む。




