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第95話 二刀の前
巨大な白の手前で、【01(ライトニング)】は足を止めた。
粒子が、地面を、空気を、音を溶かす。
雷の声ではない。
なのに、彼女の現象核が痛む。
00を見た夜の感触が、布の下の眼に重なる。
『……残響』
誰にも届かない。
応答もない。
遠方では、もう誰も近づいてこない。
02も03も、立てない。
04以降も、土俵が違うと理解している。
黒鋼も、環象社も、記録の外で止まっている。
【01(ライトニング)】は、右の刀を抜く。
いつもの一本。
軌道の見えない斬撃で、白の先端を一度裂く。
裂ける。
裂けても、すぐ塞がる。
点では足りない。
指先が、左の鞘に触れる。
二本目。
02も03も、この刀を抜いているところを見たことがない。
『……必要だ』
短い言葉のあと、布の下で光を失った眼が開く。
見えない。
見えないまま、白の核を測る。
視覚以外の感覚が、別次元で広がる。
左手が、鞘を引く。
二刀が、夜の白に対して揃う。
感情が、初めてむき出しに近い形で声になる。
『許せない』
00の夜。
失った光。
終わらない残響。
弄ぶ手も、迎える手も、全部を含めて、ここに来る。
巨大な白が、彼女一人に向けて密度を上げる。
決戦の静けさが、その前で終わる。




