第9話 面白い敵
空に、細い光の柱が立った。
歪みは光だ。
地表を焼き、影を伸ばし、見ている側の目を暈す。
環象社のランクはB。
避難の声が、遠くで重なる。
その上空に、翼のような機構を広げた影があった。
【05(ライトピラー)】は、笑いながら降下する。
『やっと、まともな相手か』
大剣が光を纏う。
斬撃が走り、光柱が敵の防壁を叩き折る。
相手は黒鋼の強化兵だった。
普通の銃火では届かない動きをする。
それでも、足りない。
【05(ライトピラー)】は空中で身を翻し、二の太刀を入れる。
防がれた。
防がれたことが、むしろ彼女の目を熱くする。
『いいじゃん。本気で来いよ』
下で、黒鋼の隊長が叫ぶ。
「距離を取れ! あれは単体で来る側だ!」
「回収優先だ、壊すな——」
『壊すな? 俺は別に、壊しに来てるわけじゃねえけどな』
【05(ライトピラー)】は次の斬撃を、あえて浅くする。
装甲を削り、足を止める。
止めを刺さない。
強化兵が膝をつく。
まだ動ける。
それが、彼女には都合がよかった。
『殺すのは、もったいないな』
翼が風を切り、高度を取る。
光の歪みは、彼女の斬撃に乗って収束へ向かう。
暴れていた柱が折れ、空の色が戻る。
環象社の拡声器が、遅れて鳴る。
「異常光が収束に向かっています。被害は最小限です」
【05(ライトピラー)】は、倒れた相手を見下ろしたまま肩をすくめる。
『次も来いよ』
敬意はある。
見下しはない。
面白い相手は、生かす。
それが、彼女の戦い方だった。
地上では、黒鋼が残骸でもなんでも回収しようと走る。
彼女はもう、そこにはいない。
次の光が立つ場所へ、先に向かう。




