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第10話 消えた08

黒鋼の内部回線に、短い報告が貼られていた。

『対象08、反応なし。再確認不能』

会議室の空気が、いつもより乾いている。

端末には、過去の交戦記録が並ぶ。

爆熱の痕跡。

大型の打撃。

一体で前線を押し返してきた記録。

「本当に消えたのか」

「現場はそう言ってる。残骸も、熱源も、追跡不能」

誰かが資料を叩く。

「あいつは強かった。こちらが複数でも、接近を許すと潰された」

「それが、いなくなった」

沈黙が落ちる。

消えた理由は書かれていない。

内部崩壊か。

別の対象に壊されたか。

上層だけが知っている顔もあるが、末端には降りてこない。

班長が咳払いをする。

「08が抜けた穴は大きい。だが方針は変わらない。

 残った対象の回収を優先しろ」

「三体の強いのが残ってる、って噂は」

「噂で戦うな。痕跡を拾え」

それでも、部屋の温度は戻らない。

一体で手こずっていた相手が消えた事実は、戦力表の数字より重い。

廊下に出た若い隊員が、独り言のように呟く。

「壊した側がいるなら、その方が怖いだろ」

誰も否定しなかった。

一方、街のどこかで、【02(ヘイル)】は砲の冷却を確認していた。

点火の臭いが、また薄い。

彼女は舌打ち一つでそれを押さえ、先へ進む。

『……08の分は、まだ残ってる』

誰にも届かない言葉だった。

黒鋼の端末では、08の項目が灰色のまま止まる。

消えた八番。

理由より先に、空白だけが共有されていく。

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