第85話 異形の完成
地下の部屋で、セレスティーヌは失った腕を見ていた。
簡易的なダイヤモンドダストが、血の代わりに形を成している。
完全な再生ではない。
なのに、以前の左腕より白に近い。
片目は赤く濁り、瞳を失いかけたまま戻らない。
顔の片側にも、粒子の筋が薄く浮いている。
「……これが、片鱗」
声は低い。
悔しさは、もう熱に変わっていた。
配下が頭を下げたまま報告する。
「01が現着し、残響は収束しました。
06と07は撤退、04も健在です」
「知っている」
セレスティーヌは粒子の腕を、ゆっくりと開閉する。
リェンの荒さではない。
ノアの理とも違う。
自分の肉体に寄せた、未熟な白だ。
「端では足りない。
01には、まだ届かない。
なら——別格の、手前から行く」
画面が切り替わり、雹と雨の記号が中央に寄る。
「02と03」
配下の一人が、息をのむ。
「三傑です」
「別格なら、別格のまま迎える。
異形のこの身で、触れる」
信仰が、壊れた肉体に落ちている。
白き終焉を完成させる手として、自分を差し出し始めている。
「配置を変えろ。
雨と雹が重なる予兆を待て」
命じられた者が動く。
セレスティーヌは窓のない壁を見る。
壁の向こうに街があるわけではない。
それでも、白い空を見ている目をしていた。
表の街では、環象社が定型を流す。
「現在、大きな発令はありません」
発令のない夜に、異形の白が——三傑の方へ、確実に向き直っていた。




