第79話 解散のあと
誰からともなく、空気が解け始めた。
【07(オーロラ)】が、端で小さく伸びをする。
『……重い話、終わり? 帰るね』
軽さは、いつもの防御だ。
なのに足取りは、来るときより少し遅い。
【06(ハリケーン)】は槍を立て、短く頭を下げる。
礼というより、受け取ったという印だった。
『私は、風のところへ戻る』
【05(ライトピラー)】は腕を組み、01の方を一度だけ見る。
『隠すなよ、次は。腹立つ』
言うだけで、深くは踏み込まない。
踏み込めない距離も、まだ残っている。
【04(イラプション)】は弓を担ぎ、静かに告げる。
『抑止の位置は、変えない。
ただし——白の気配には、共有を』
最小の変化だ。
なのに、01にとっては大きかった。
【03(レイン)】は鎌を担ぎ直し、舌打ちをする。
『……知ったところで、あたしの雨は変わんない』
変わらない、と言いながら、02の方を一瞥する。
02は答えない。
答えないまま、砲を担ぎ直す。
『お巫女。残響が止まらなくなったら、呼べ。
一人で斬るな』
【01(ライトニング)】は、短い間のあと、頷く。
『……分かった』
それだけの返答だった。
なのに、今夜以前には出なかった返事だ。
影が、一人、また一人と廃ビルを出る。
揃うことなど、今までほとんどなかった。
揃ったあとも、急に仲間になるわけではない。
各自の現場へ、各自の判断で戻る。
【01(ライトニング)】は窓際に残り、最後まで布の下の眼を開いたままにする。
光を失った眼が、誰にも見えない。
見えないまま、白の残響を測り続ける。
遠方で、環象社の定型が流れる。
「現在、大きな発令はありません」
発令のない夜に、七嵐の関係が、わずかにだけずれた。
ずれたまま、次の歪みが街を待っている。




