第70話 白の残響
三度目の白は、点ではなかった。
街区をまたぐように、粒子が薄く這い、看板も路面も輪郭を溶かし始める。
環象社の端末が、複数地点で同時に点滅する。
既存ランクに載らない異常が、面で広がっていた。
『……今度は、広い』
【01(ライトニング)】は廃ビルを出る前から、その広さを測っていた。
雷の声ではない。
白い残響の方が、街の底で厚い。
現場に入っても、刀はすぐには抜かない。
一点を斬れば足りる種類ではない。
流れを読み、核の薄い場所から順に断つ。
一閃。
また一閃。
結果だけが先に残り、粒子が面から欠けていく。
黒鋼の監視が、遠方で固まる。
「また雷のやつだ」
「広すぎる。一人で何を——」
説明は続かない。
見えるのは、収束していく白と、残らない軌道だけだ。
【01(ライトニング)】は刀を鞘に戻す。
指先の震えは、もう隠せる種類ではない。
『……まだ、残ってる』
斬っても、街の底に白い感触が沈む。
一度目、二度目より濃い。
一人で足りるうちは一人で斬る、と言い続けてきた境界が、薄くなっている。
遠方で、【02(ヘイル)】が空を見る。
【03(レイン)】も、赤く染まった雨の夜のあとに、重い気圧を感じて足を止める。
呼ばれてはいない。
なのに、01の方向から来る圧だけは分かる。
【01(ライトニング)】は廃ビルへ戻る途中、一度だけ立ち止まる。
あと一度、残響が面になったら。
そのときは、一人では持たないかもしれない。
環象社の拡声器が、遅れて定型を流す。
「原因不明の粒子現象は収束に向かっています」
収束。
彼女の中では、七嵐に全てを告げる必要が、はっきりと輪郭を持っていた。




