第66話 別格
敗報が、部屋に落ちた。
「06、抑えられず撤退」
「07も同様。損害あり」
セレスティーヌの指が、画面の縁を一度だけ強く叩く。
すぐに離す。
だが、熱は残った。
「……端で、それ」
悔しさは、声より先に空気へ出る。
配下は頭を下げたまま、言葉を選ばない。
セレスティーヌは立ち上がり、分布図を睨む。
「リェンは粗くて壊れた。
今度は手順を踏んだ。それでも届かない」
彼女は、七嵐の恐ろしさを、改めて口にする。
「影は、ただの異常気象の対処ではない。
個別に強く、連携などしていなくても現場を奪う。
端の番号で、この通りよ」
画面が切り替わり、雨と雹と雷の記号が中央に寄る。
「まして、三傑は別格」
その言葉が、部屋の温度を下げる。
「02は距離を支配する。
03は感情ごと刈る。
01は……結果しか残さない」
配下の一人が、小さく息を吸う。
「では、端からでは足りない」
「足りない。
それでも、端を知らなければ三傑には更に届かない。
悔しいけれど、事実よ」
セレスティーヌは悔しさを、思想の熱へ変える前に一度噛み締める。
白い完成を語る声が、今夜は少しだけ荒れていた。
その報告の輪の外で、イグニスが黙って聞いていた。
顔は伏せていない。
なのに、誰にも同意も反論もしない。
三傑は別格。
03は感情ごと刈る。
その言葉だけが、彼の中で残る。
セレスティーヌが次の指示を組み立て始める頃、
イグニスの位置は、すでに部屋の端へ寄っていた。
告げない。
許可も取らない。
別格の一端を、自分の目で測りに行く。




