第65話 端の牙
最初の接触は、手順通りに見えた。
港では、セレスティーヌの部下が【06(ハリケーン)】の退路を塞ぐ。
拘束具が開き、計測の光が風の中で点く。
『退いて』
【06(ハリケーン)】の声は、まだ穏やかだった。
相手が下がらない。
守るものが背後にいる。
小動物の気配が、壊れた柵の陰で凍っている。
次の瞬間、風の質が変わった。
退かせるための風ではない。
足場を削り、隊列を裂き、拘束の輪を空へ吹き飛ばす風だ。
争いは好まない。
それでも、越えられた線の先では速かった。
「ち——」
「守れ、輪を——」
言葉が途中で散る。
人が倒れる。
死ぬほどではない。
だが、戦列としては終わっている。
【06(ハリケーン)】は槍を下ろし、柵の陰へ一度だけ目を向ける。
『……触らないで』
同じ時刻、屋根の上では【07(オーロラ)】が双銃を回していた。
『めんどくさい』
乱射は雑に見える。
雑なのに、拘束具も、踏み込みも、全部先に弾かれる。
部下たちの精密な手順が、光の粒の中で崩れていく。
「軽い相手のはずでは」
「軽くない——」
【07(オーロラ)】は欠伸を噛み殺し、最後の一発で先頭の足を止める。
『触れないで。帰るね』
追わない。
興味がない。
終わった現場から、次の屋根へ跳ぶ。
敗走の通信が、地下の部屋へ返る。
「06、抑えられない」
「07も、想定の外」
「撤退します」
画面の向こうで、端の番号が淡々と歪みを収めていく。
取り込む側の手が、先に折れていた。




