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第63話 残る白

今度の白は、薄くなかった。

港寄りの空き地で、粒子が地面を削り始めていた。

リェンの夜ほど荒くはない。

なのに、範囲が広い。

環象社の端末は、既存ランクに載らない異常として点滅する。

『……来る』

廃ビルを出る前に、【01(ライトニング)】は分かっていた。

雷の声ではない。

白い残響の方が、先に近い。

現場に着いても、刀はすぐには抜かない。

粒子の流れを、電磁の感触で測る。

誰かが弄んでいる感触ではない。

残っている。

終わっていない何かが、地表に滲んでいる。

刀が一瞬だけ光る。

軌道は残らない。

結果だけが先に来る。

白い粒子が、音もなく霧散する。

人の悲鳴は、規制線の外で止まる。

黒鋼の末端が、固まる。

【01(ライトニング)】は刀を鞘に戻す。

指先が、わずかに鞘を強く握る。

『……まだ、消えない』

斬っても、街の底に白い感触が残る。

一度目より濃い。

焦りが、背中に積もる。

遠方で、【02(ヘイル)】が空を一瞥する。

『お巫女、今夜も速い』

追わない。

追えない距離でもないが、踏み込まない。

【01(ライトニング)】は廃ビルへ戻らない。

戻る前に、もう一度、残響の端を測る。

まだ、呼ばない。

まだ、一人で足りるうちは、一人で斬る。

環象社の拡声器が、遅れて定型を流す。

「原因不明の粒子現象は収束しました」

収束。

彼女の中では、終わっていなかった。

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