第6話 測れない距離
高所から見ると、雨の収束はあっさり見えた。
【04(噴火)】は、壊れた歩道橋の上で弓を構えたまま動かなかった。
矢は番えていない。
番える必要がないと判断したからだ。
下では、小柄な影が大鎌を担いで去っていく。
その後ろで、砲を持った長身が短い言葉を残す。
会話の内容までは届かない。
届くのは、空気の重さだけだ。
『……測れない』
【04(イラプション)】は自分に言った。
雨の軌道が乱れた瞬間、自分ならどこに矢を置くか考える。
答えは出る。
だが、その矢が間に合うかどうかは、別の問題だった。
以前、一度だけ間に合わせようとしたことがある。
結果は、浅い傷を自分の装甲に残しただけだった。
三傑と呼ばれる距離は、数字の差以上に深い。
【04(イラプション)】は弓を下ろす。
介入しない。
止めに入れば、余計な火種になる。
それだけは避けたかった。
遠方で、環象社の車両がライトを回す。
「収束を確認。周辺の安全を優先してください」
その声は正しい。
正しいが、本物の最前線を指してはいない。
【04(イラプション)】は歩道橋を降り、別の歪みの予兆がないかを測る。
自分の属性は噴火だ。
今は静かだ。
静かでも、いつ牙を向くか分からない。
『深入りしない』
それが、彼女が選んだ立ち位置だった。
勝てない相手に並ぼうとしない。
代わりに、他の番号が不用意に突っ込まないよう、先に抑える。
測れない距離がある。
測れないと知っているから、彼女は弓を低く持つ。
夜風が、焼けていない街の匂いを運んでくる。
青は、まだ戻っていない。




