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第57話 白き終焉

セレスティーヌの部屋に、リェンの失敗記録と、港の風害、光の収束データが並んでいた。

配下が頭を下げる。

「リェンの粒子は回収途中です。制御は荒すぎました」

「荒い手は、白に弾かれる」

セレスティーヌの声は高くない。

失望はあるが、動揺はない。

彼女は画面の中央に、古い災害記録を呼び出す。

公表の薄い、数年前の大規模事象。

空が白く濁り、街の機能が止まった夜。

「白き終焉」

その名を、彼女は丁寧に口にする。

「人は災害と呼ぶ。環象社は記録を薄くする。

 でも本質は違う。あれは未完の純白よ」

部屋の空気が、わずかに変わる。

「終わっていない。途中で止まっただけ。

 だから世界は、今も歪み続ける。

 空や大地が乱れているのは、そのせい」

配下の一人が躊躇いがちに聞く。

「では、私たちが完成させる、と」

「迎えるのよ。奪うのではなく。

 リェンは道具として触った。だから壊れた」

セレスティーヌは、風と光の記号を指でなぞる。

「強い三体はまだ早い。

 端の番号から、手触りを知る。

 06は退く。07は軽い。扱いやすい」

「黒鋼も動いています。抗現象の兵装まで出ました」

「利用できるなら、すればいい。

 彼らの欲しがる残骸と、私たちの迎える白は違う」

彼女は窓のない壁を見る。

壁の向こうに街があるわけではない。

それでも、白い空を見ている目をしていた。

「白き終焉は、恐怖の名前じゃない。

 欠けた世界を、一度きちんと終わらせるための名前」

誰も、すぐには返せなかった。

信仰に近い熱が、静かな声の中に埋まっていた。

表の街では、環象社が定型を流している。

「現在、大きな発令はありません」

発令のない夜に、白き終焉の名だけが、地下の部屋で生きていた。

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