第56話 経路のノイズ
二人は廃街の路地を、ほとんど無言で駆けていた。
【05(ライトピラー)】が先に走り、時折後ろを確認する。
【04(イラプション)】は損傷の残る体を引きずりながらも、一定の距離を保って続く。
ノアの干渉場からはすでに離れたが、油断はできない。
『あの緑のやつ、なんだったんだよ』
【05(ライトピラー)】が苛立たしげに切り出す。
『出力が急に落ちるし、剣の軌道までブレる。力で押されてる感じじゃなかった』
【04(イラプション)】は走りながら、短く息を整えて答える。
『現象核への直接攻撃ではない。私たちが操るときの経路に、ノイズを混入させている』
『はあ?』
『私たちは、核で法則を認識し、自我で意図を決め、それを出力に変換している。
あの兵装は、意図を出力へ変換する段階を邪魔する。だから力が鈍り、制御が狂う』
【05(ライトピラー)】は顔をしかめる。
『つまり、力を封じるんじゃなくて、出しにくくしてるってことか』
『そうだ。完全ではない。だが、十分に厄介だ。
ガルスのような物理攻撃や、セラスの牽制とは性質が違う』
路地を曲がりながら、続ける。
『力でねじ伏せる相手なら、こちらも力で返せる。
だが、操る行為そのものを阻害される場合、無理に出力を上げると核に負荷がかかる。
だから先に距離を取った』
【05(ライトピラー)】は不満そうに舌打ちをする。
『……分かった。でも、腹立つな。次は絶対にあの眼鏡をぶっ潰す』
【04(イラプション)】はそれには答えず、前方の暗がりを見据える。
『まずは体を戻す。そのあとで、対策を考える』
二人の足音だけが、夜の廃街に小さく響く。
ノアの「理」が、七嵐にとって新しい種類の脅威であることを、彼女たちははっきりと認識し始めていた。




