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第54話 前に出る光

足音の正体は、一人が先に踏み出していた。

廃工場の闇で、【04(イラプション)】は破損した大弓を膝に置いたまま顔を上げる。

修復は六十パーセント。

完全ではない。

「対象04。損傷確認。今なら確保できる」

セラスの声が短い。

黒鋼上位の実戦側だ。

精密で冷静、無駄を嫌う。

対象の個体差を踏まえた上で動く層。

【04(イラプション)】は矢を番え直そうとして、指が遅れる。

修復に回していた出力が、すぐには戦闘へ戻らない。

『……近づかないで』

抑止の言葉だ。

今夜は、効きが悪い。

セラスが踏み込む。

精密な牽制が、04の射線をずらす。

その瞬間、工場の上から光が落ちた。

『邪魔するな』

【05(ライトピラー)】が翼を開いて降りてくる。

大剣が光を纏い、セラスの先頭を叩きずらす。

「……別個体。05」

セラスは即座に対象を切り替える。

04を取りきるより、前に出た05を測る判断だ。

【05(ライトピラー)】は04を一瞥して、短く言った。

『ずいぶんやられてんじゃん』

『……まだ足りない』

『なら俺が前に出る。修復しろ』

通信はない。

なのに役割が分かれる。

初めて、七嵐が同じ敵を分ける形になった。

セラスは刃を構え、【05(ライトピラー)】と正面でぶつかる。

剣と刃が交差し、工場の闇が白く裂ける。

セラスは精密だ。

無駄がない。

感情を乗せない。

それでも【05(ライトピラー)】の圧は、段々と熱を持つ。

『いいじゃん。ちゃんと来る』

見下しではない。

面白い相手への熱だ。

後ろで、【04(イラプション)】は壁に背を預け、修復を加速させる。

余分な感覚を落とし、内部へ出力を戻す。

セラスの軌道は、05が全部受けている。

数合のあと、セラスは刃を引いた。

「単独突破は難しい。いったん下げる」

測るための衝突だと、最初から割り切っている。

無理に04へは戻らない。

煙の向こうへ退く。

【05(ライトピラー)】は追わない。

追えば、04の修復が空く。

『戻れよ。次も来い』

工場に残るのは、熱と、光の残滓と、修復音だけだ。

【04(イラプション)】が、ゆっくりと目を開ける。

『……七十。まだ足りない』

『十分だろ。立て』

二人の影が、同じ現場に並ぶ。

並んだまま、次の気配を待っていた。

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