第42話 狙われるナンバー
風の予兆が、港の倉庫街で立っていた。
環象社のランクはC。
クレーンが軋み、コンテナの隙間を風が抜ける。
【06(ハリケーン)】は長槍を立て、気流のねじれを測る。
『……また来てる』
歪みだけではない。
遠くに、人の気配が複数ある。
黒鋼にしては整いすぎている。
環象社の作業員でもない。
彼女は争いを急がない。
先に風の核を裂き、倉庫の揺れを落とす。
小動物の住処が崩れる前に、圧力を上へ逃がす。
その背後で、別の光が夜空を濁らせ始めていた。
【07(オーロラ)】は屋根の上で双銃を回し、欠伸を噛み殺す。
『めんどくさいのが二件も』
極光じみた歪みを乱射で打ち崩しながら、彼女は下の人影にも気づいている。
興味はない。
ないが、視線の質がいつもと違う。
『追ってる? あたしたちを』
答えはない。
あるのは、観測と、距離を詰める足音だけだ。
セレスティーヌ側の手先は、まだ接触しない。
測る。
記録する。
風と光の反応速度、退避の仕方、他の番号を呼ばないこと。
「06は退かせる。07は軽い」
通信の端で、誰かが短く報告する。
「三傑とは別です。手が届きます」
その言葉は、当の本人たちには届かない。
【06(ハリケーン)】は歪みを収め、槍を下ろす。
【07(オーロラ)】は双銃を担ぎ、次の屋根へ跳ぶ。
『終わった。帰るね』
普通の夜に見える。
普通ではない視線だけが、二人の背中を追っていた。
表では、環象社が定型を流す。
「強風および異常発光は収束に向かっています」
狙われる番号は、まだ自分が選ばれていることを知らない。
知らないまま、次の歪みへ歩いていく。




